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Dr. LONNIE SMITH TRIO

artist Dr. LONNIE SMITH

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


今年76歳を迎えるジャズ・オルガン・レジェンド、ドクター・ロニー・スミスの公演が昨日から始まりました。'60年代半ばにデビューし、ジョージ・ベンソンのグループに在籍。'67年にはルー・ドナルドソンの歴史的なナンバー「Alligator Bogaloo」にベンソンと共に加わっています。'60年代後半からは自身のグループで活動、R&B風の弾き語りを聴かせた「Move Your Hand」が特大の人気を集めました。アルバム『Live at Club Mozambique』は、当時のロニー・スミス・バンドが危険なほどホットでファンキーでパワフルだったことを示す一枚です。

それから半世紀が経つうちに、ロニーと同じ時代を過ごしたオルガン奏者は次々と鬼籍に入ってしまいました。しかし彼は今なお音楽のパレットを拡げ、孫ほど年の離れた気鋭ミュージシャンと共に、新たな世界を創り続けています。"ジャズ・オルガン=ファンキー、グルーヴィー"というイメージを保ちつつも、スペイシーでアグレッシヴでクールで交響楽的で・・・とにかく雄大なスケールで迫ってくるのが現在のロニー・スミスなのです。

ステージの左端にはギタリストのジョナサン・クライスバーグ(来月8/20、21に自身のグループで東京・丸の内の「コットンクラブ」に登場します。オルガンはゲイリー・ヴァセイシが担当予定)が、右端にはドラマーのゼヴィア・ブレイカーが位置し、ロニーは中央で様々なキーボード類を操ります。とはいえメインはやはりハモンド・オルガン。3人はささやくような小音量から爆発的な大音量までを自在に操り、聴く者を引き込んでいきます。

曲目は「Devika」、ポール・サイモンのカヴァー「50 Ways to Leave Your Lover」、若き日のジョン・コルトレーンも演奏したタッド・ダメロン作「On a Misty Night」など最新作『All in My Hand』からのものが中心。「Devika」の導入部ではシンセサイザーから弦楽器、オーボエ、ミュート・トランペットのような音などを引き出し、シンフォニックな世界へと聴き手をいざないます。そこから次第にサンバ調の展開になって、乗りの良いアドリブが登場します。遅めの2ビートと4ビートが交互に登場するアレンジが施された「On a Misty Night」では、ゼヴィアのキメ細かなブラッシュ・ワークが絶品。ブラッシュを人差し指と中指の間にはさんで90度近い角度まで持ち上げ、極めて高速でスネアをさするのです。波打つようなその音と、ロニーの甘美なオルガン・サウンドの調和も、この日のクライマックスのひとつでした。オーラスでのロニーは近年の必須ツールである特製の"杖"(Electric Walking StickまたはSlaperoo Percussionと呼ばれています)を使った長大なパフォーマンスも披露。視覚的にもインパクト大なこのパートは、ライヴで味わうに限ります。

公演は30日まで続きます。進化・発展しつづけるドクター・ロニー・スミスの世界をぜひ生でどうぞ!
(原田 2018 7.29)

SET LIST

2018 7.28 SAT.
1st
1. NIGHT SONG
2. DEVIKA
3. ON A MISTY NIGHT
4. 50 WAYS TO LEAVE YOUR LOVER
5. PILGRIMAGE
 
2nd
1. STRAIGHT, NO CHASER
2. FRAME FOR THE BLUES
3. ALHAMBRA
4. AND THE WORLD WEEPS
5. DAPPER DAN

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