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The EXP Series #22 / MAKAYA McCRAVEN

artist MAKAYA McCRAVEN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

すさまじく躍動感あふれるライヴでした。いまもぼくの体の中で彼の打ち出した強烈なビートが脈打っています。

俊英マカヤ・マクレイヴン、待望の登場です。父親はアーチー・シェップやサム・リヴァースのバンドで活動したことのあるスティーブン・マクレイヴン(バークリー音楽院でジョー・ハントやアラン・ドーソンに師事)。'90年代にはシェップと来日もしており、それを生で見たぼくは"すごくスケールの大きなドラマーだなあ"と思い、当時働いていたジャズ雑誌に記事を書いた覚えがあります。マカヤは1983年フランス・パリに生まれ、米国マサチューセッツ州アムハーストでジャズを学び(ここはユセフ・ラティーフが後半生を過ごしたところです)、2007年からシカゴに移っています。

本公演の共演者はグレッグ・ウォード(アルト・サックス、ヴォーカル)、マット・ゴールド(ギター)、ジュニアス・ホール(エレクトリック・ベース、ヴォーカル)。マカヤに次ぐ個人的なお目当てはグレッグでした。彼はシカゴ・ジャズ・サックスの神格フレッド・アンダーソンらに学び、2010年代初頭"フォニック・ジャガーノート"というバンドを組みました。現ロバート・グラスパー・トリオのドラム奏者ダミオン・リードもその一員で、強烈にドライヴするアコースティック・ジャズを聴かせてくれたものですが、この日はケイシー・ベンジャミンばりに音声を加工しながら、サックスとヴォイスでスペイシーなプレイを繰り広げました。

マカヤのセットはペダルこそツイン仕様ではありませんが、ハイハットを左右に1つずつおいたり、いわゆるタムタムの位置に別のスネアを置いたりと、凝りに凝ったもの。音量はとてつもなくメリハリに溢れ、とくに小さな音で抑え気味に叩く時の粒の揃ったトーンは"驚愕"のひとことにつきます。レパートリーは既発アルバムからのものあり、まだタイトルのついていない新曲ありと、実に多彩。バンドを率いての来日が初めてであるためか(リリースパーティのために日本に立ち寄ったことはありますが)、とにかく気合満点のステージで、ぼくはまばたきするのも惜しいほどでした。

すさまじく壮大な展開を持った新曲に続いて演奏されたのは、伝説のドラム奏者トニー・ウィリアムス作「There Comes a Time」。彼もスティーブン同様、アラン・ドーソンに学んだひとりです。トニーはジャズ・ロック・バンド"ライフタイム"でこの曲をドラムの叩き語りで聴かせていましたが、マカヤのバンドではグレッグとジュニアスが歌います。さらに、鳴りやまない拍手に応えて演奏されたのは父スティーブンの楽曲「Song of the Forest Boogaraboo」。父のヴァージョンではアーチー・シェップがソプラノ・サックスをプレイしていましたが、この日はマットの泣き叫ぶようなギターに、前述ふたりのコーラスが絡みます。三橋美智也がコブシを効かせて歌っても違和感のなさそうな、ゆったりした音符によるペンタトニック・スケールが、会場を満たしました。

先ごろやっと国内プレスされた『イン・ザ・モーメント』、および最新作『ハイリー・レア』もいうまでもなく必聴ですが、なによりも今、マカヤが日本で演奏しているという事実を、ぼくは一人でも多くのひとに伝えたくて仕方ありません。公演は本日まで、ぜひあなたも"ビート・サイエンティスト"のとりこになってください!

(原田 2018 7.11)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2018 7.10 TUE.
1st & 2nd
1. THIS PLACE, THAT PLACE
2. ABOVE AND BEYOND
3. NEXT STOP
4. THREE FIFTHS A MAN
5. NEW UNITITLED
6. FINANCES
7. THERE COMES A TIME
EC. SONG FOR THE FOREST BOOGARABOO

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