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PAQUITO D'RIVERA QUINTET

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

グラミー賞/ラテン・グラミー賞の受賞回数、計14回! キューバが世界に誇るラテン・ジャズ・レジェンド、パキート・デリベラが4年ぶりの来日公演を開催中です。前回はブラジルのピアノ・トリオ"トリオ・コヘンチ"との共演でしたが、今回はレギュラー・ユニットによるステージです。共演者はアルゼンチン出身のディエゴ・ウルコラ(トランペット、ヴァルヴ・トロンボーン)、グループ最年少のアレックス・ブラウン(ピアノ)、ペルー生まれのオスカー・スタグナーロ(6弦エレクトリック・ベース)、個人的には"オレゴン"での活動も印象深いマーク・ウォーカー(ドラムス)と、2009年11月に出演したときとまったく同じ顔触れ。つまりパキートは、このメンバーによるユニットを約10年間、維持しているわけです。

そして彼は、この6月4日に70歳を迎えました。10代前半から音楽界の第一線で活動を続けてきただけに(16歳当時の、歌手グアパチャとの共演レコーディングは鳥肌ものです)、キャリアは半世紀を軽く超え、アルト・サックスの鋭い音色、クラリネットの暖かく包み込むような吹奏には磨きがかかるばかり。「我々のライヴでは、皆にラテン・アメリカ旅行をしているような気分になってほしいんだ」と語る通り、プログラムは本当にバラエティに富んでいて、アフロ・キューバン・ジャズ、アメリカでの恩師ディジー・ガレスピーへの敬意を感じさせるビ・バップはもちろんのこと、ブラジル出身のマエストロであるアントニオ・カルロス・ジョビンに捧げた「One for Tom」ではパキート流ジャズ・サンバというべき世界を創出し、アルゼンチンが生んだタンゴの神格アストル・ピアソラへの思いを込めた「Blues for Astor」ではピアソラの代表曲「Libertango」風リズム・パターンにのせて、火の出るようなアドリブを繰り広げました。

芸達者というか、本当に多才なミュージシャンが揃っているのもこのグループの特徴です。マークは通常のドラム・セットにティンバレス、カウベル、カホン(ペルーの打楽器)を加えた独自のセッティングで縦横無尽にソリストを煽り、ディエゴは惜しげもなくトランペットからハイ・ノートを出す一方、トロンボーンを吹く時は渋く落ち着いたフレーズづくりで迫ります。さらに曲によってはトランペットに2種のミュート(ハーマン・ミュート、カップ・ミュート)をつけて鋭さ/甘さの両方を楽器から引き出します。「なるほど、これはパキートが手放さないわけだ」と、ぼくはディエゴの技の数々にひたすら酔いしれました。

ラテン・ジャズといえば、伝説のユニット"イラケレ"でパキートと共に演奏したアルトゥーロ・サンドバルの登場も9月に決定しました。こちらのステージも見逃せないものになりそうですが、まずはパキートの公演をぜひご覧いただきたいと思います。熱いセッションは30日まで続きます。

(原田 2018 6.29)


Photo by Great The Kabukicho

SET LIST

2018 6.28 THU.
1st
1. CURUMIN
2. NOCTURN
3. BLUES FOR ASTOR
4. MARIELA
5. ONE FOR TOM
6. CENTRO HABANA
7. ESTAMOS AI (MUSIC THEME)
 
2nd
1. CHICIC
2. BEETHOVEN PERU
3. BIRKS WORKS
4. NIGHT IN TUNISIA
5. UMA A CERO
6. WHAT ABOUT THAT
7. ESTAMOS AI (MUSIC THEME)
EC. BLACK ORPHEUS

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