原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ジャズを象徴するオーケストラが、約4年半ぶりにブルーノート東京に戻ってきました。1923年結成、世界最長の歴史を持つジャズ・バンドであるデューク・エリントン・オーケストラの公演です。

創設者のピアニスト/作曲家デューク・エリントンは1974年に亡くなってしまいましたが、その楽曲は継承され続けています。そしてケニー・ギャレット、マルグリュー・ミラー、リッキー・フォード、ドン・バイロン、カマウ・アディリフ（チャールズ・サリヴァン）など、40数年の歴史を持つ御大亡き後のオーケストラからも逸材が次々と輩出されて現在に至っています。今回のラインナップも、トロンボーンのアンドレ・ヘイワード、アルト・サックスとクラリネットのマーク・グロス、テナー・サックスのシェリー・キャロル、'80年代から在籍しているベースのJ.J.シャカ―（別名J.J.ウィギンス。ピアノ奏者ジェラルド・ウィギンスの息子で、12歳のときからプロとして活動しています）、トランペットのジェームズ・ゾラー、ピアノのロバート・レッドなど聴きごたえのあるプレイを聴かせる面々が集まっており、聴かせ、乗せて、盛り上げるビッグ・バンド・サウンドに全身で浸ることができます。コンダクターは、ハワード大学の教授としても知られるアルト・サックス奏者のチャーリー・ヤング。ジェスチャーの大きい振り、ユーモラスなMCで大きな喝采を浴びていました。

演目はテーマ・ソングの「Take The A Train」に始まり、「In A Sentimental Mood」、「Mood Indigo」などを経て「Rockin' In Rhythm」「Satin Doll」で締めるという、人気曲の玉手箱というべきもの。そこに「実に魅力的なのだが、どういうわけかあまり知名度のないナンバー」を挟んで、じっくり聴かせてくれるのも嬉しいところです。「New Orleans Suite」からの「Portrait Of Louis Armstrong」ではジェームズ・ゾラーの痛快なトランペットがフィーチャーされ、たしか1946年初演の「The Eighth Veil」ではやはりトランペット・セクションから今度はケヴィン・ブライアンが前面に登場し、猛烈なハイノートを交えたプレイで観客を沸かせます。"この曲を知っているのは、相当ハードコアなファンじゃないかな"という紹介の後に始まったのは1972年にウィスコンシン大学のために書いた「UWIS　Suite」からの「Loco Madi」。御大エリントンが死の2年前に書いた、ほとんどカヴァーされることなく現在に至っているナンバーです。シェリー・キャロル、ケヴィン・ブライアンに活躍の場を与えたあと、チャーリー・ヤングがアルト・サックスで圧巻のロング・ソロを聴かせました。

デューク・エリントンが75年の生涯で残した楽曲は3000とも5000とも言われています。あなたがいらっしゃるセットでは、どんな名曲が演奏されることでしょうか。公演は19日まで続きます。
(原田 2018 5.18)

Photo by Yuka Yamaji