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Ms. LISA FISCHER & GRAND BATON

artist LISA FISCHER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ソロ・シンガーとして「How Can I Ease the Pain」をR&Bチャートのトップに送り込み、1989年からは世界最高峰のロックバンドであるローリング・ストーンズのバック・シンガーとしても活躍。主役を演じてもバックに回っても、なにに取り組んでも超一級の"歌手の中の歌手"がミズ・リサ・フィッシャーです。彼女の2年ぶりとなるブルーノート東京公演が昨日から始まりました。ユニット名は"ミズ・リサ・フィッシャー&グラン・バトン"、不動のメンバーによる圧巻のステージを楽しむことができます。

バックを務める3人はいずれもジャズのバックグラウンドを持っています。音楽監督を務めるJ.C.マイヨールはリチャード・ボナのバンドで「ブルーノート東京」出演経験もある奏者。エレクトリックとアコースティックのギターに加え、フェンダー・ローズや、フランス人技術者と共同開発したというサズ・ベースも聴かせてくれました。これはトルコ等で使われるサズ、そして中東で使われるブズーキを独自に改良したもので、哀愁のこもった太い音色でアンサンブルに大きな彩りを加えます。ベースのエイダン・キャロルは師匠のジョン・パティトゥッチやジェームス・ジナス同様、エレクトリックもアコースティックもこなします。フレッド・ハーシュ、アーロン・ゴールドバーグなど数々のアコースティック・ピアニストの共演も誇る若き名手といっていいでしょう。ドラムスのティエリー・アルピノはフランスに生まれ、現在はN.Y.が活動拠点です。かつてクレモンティーヌのバンドで来日したことを思い出す方もいらっしゃるのでは、と思います。

2本(1本にはエフェクターがかけられています)のマイクを駆使したり、マイクから離れて豊かな生声を響かせたり、リサの歌いっぷりは今回も変幻自在です。その音作りはジャンルや国境や時代を軽々と超え、もはや"ヴォーカル・ミュージック"と呼ぶしかない領域に入っています。ぼくが観た初日のファースト・セットではマイヨールのワイルドな書き下ろし曲に加え、前述の大ヒット「~Pain」、ダイナ・ショアやエラ・フィッツジェラルドも歌った古典的なスタンダード・ナンバー「Blues in the Night」、さらにレッド・ツェッペリンの「Immigrant Song」、誰もが待っていたであろうローリング・ストーンズ・ナンバー(曲名は、いらっしゃるオーディエンスのためのお楽しみということにしましょう)などを次々と聴かせてくれましたが、とにかくアレンジは独創的のひとことに尽きますし、リサもどんどんメロディを変えながら歌い込んでいくので、聴いているうちに「あの曲が、こんなふうに変化していくなんて!」という驚きがおとずれるのです。ふくらみのある低音から空間を切り裂くような超高音までを縦横無尽に操るリサの歌唱は、ヴォーカリスト志望者に無限のインスピレ―ションを与えることでしょう。公演は本日も行なわれます。

(原田 2018 4.4)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2018 4.3 TUE.
1st
1. ADDICTED TO LOVE
2. IMMIGRANT SONG 〜 FRAGILE
3. DANCING IN THE STREET 〜 IT'S ONLY ROCK'N ROLL (BUT I LIKE IT)
4. BLUES IN THE NIGHT 〜 DIDO’S LAMENT
5. HOW CAN I EASE THE PAIN
6. JUMPIN' JACK FLASH
7. GIMME SHELTER
 
2nd
1. HEART AND SOUL 〜 FEVER
2. (I CAN'T GET NO) SATISFACTION
3. BLUES IN THE NIGHT 〜 DIDO’S LAMENT
4. HOW CAN I EASE THE PAIN
5. MESSAGE
6. GIMME SHELTER

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