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CÉCILE McLORIN SALVANT

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


アルバム『For One to Love』と『Dreams and Daggers』でグラミー賞"最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞"を連続受賞。新歌姫の座に躍り出たセシル・マクロリン・サルヴァントが、待望のブルーノート東京単独初公演を開催中です。ステージの両脇には大きな桜が飾られ、それもまた風流です。いままさに輝いているセシルのステージに、いっそうの華やぎが加わった印象を受けました。

セシルは1989年、フロリダ州マイアミで生まれました。父はハイチ出身、母はフランス出身。5歳からピアノを始め、8歳から聖歌隊で歌うようになりました。2010年にはセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションで首位となり(歴代首位にはグレッチェン・パーラト、マーキス・ヒル、ベン・ウィリアムス、アンブローズ・アキンムシーレなどがいます)、前後して自主レーベルから初アルバムも発表しています。ぼくがセシルの歌に最初に感銘を受けたのは、サックス奏者アーチー・シェップのアルバム『I Hear The Sound』で歌っていた「Quiet Dawn」という曲を聴いたときでした。ふくよかでまろやかな歌声に大いに好感を持ったものですが、あれよあれよという間に彼女はジャズ・ヴォーカル界のトップ・クラスに登りつめました。ブルーノート東京への登場は、2013年にデューク・エリントン・オーケストラのゲスト・シンガーとして訪れたとき以来。今回はもちろん、彼女が最も信頼するピアニストであるアーロン・ディール(ウィントン・マルサリス、ベニー・ゴルソンらとも共演。ケニー・バロンに学び、アート・テイタムやオスカー・ピーターソンを敬愛)を含む自身のユニットでの来日です。

セシルは事前にセットリストを作らず、会場の雰囲気に応じて歌う曲を決めていきます。初日のファースト・セットではミュージカル『マイ・フェア・レディ』からの「On the Street Where You Live」、バート・バカラック作「Wives and Lovers」、コール・ポーター作「All Through the Night」、レナード・バーンスタイン作「Lonely Town」、ボブ・ドロー作「Nothing Like You」などを聴かせてくれました。バカラックにしてもポーターにしても、もっと有名な曲はたくさんあるのですが、ちょっと渋めのナンバーをピックアップして、観客に快く届けていくのがセシル流。ファースト・コーラスはじっくりと歌い込み、セカンド・コーラスから徐々にフェイク(変奏)を加えていきます。幅広い声域を使ったうねるような歌い方にはサラ・ヴォーン、フェイクする時のトランペットのようなフレージングにはベティ・カーターとの共通点を、個人的には感じました。スキャットはしません。伴奏のミュージシャンも若き名手揃い。アーロンは粒立ちの良い音でイキのいいフレーズを挟み、ポール・スキヴィーはウッド・ベースの逞しい生音を存分に味わわせてくれました(ぼくはピアノ奏者ジョン・オニールのアルバム『ライヴ・アット・スモールズ』で聴いて以来、一度ナマで見たいと思っていたのです)。そしてカイル・プールは2012年のモンク・コンペでセミ・ファイナリストに選ばれたドラマー。ハイハットを2拍4拍で踏み、スムーズなシンバル・レガートを送り出し、バラードではブラッシュ・ワークを用いて香り高いプレイを聴かせるなど、まさしく超正統派のモダン・ジャズ・ドラムでリズム面の要を担っていました。

鳴りやまない拍手を受けて一度ステージを降りたセシルですが、もっと聴きたいというファンの気持ちは収まりません。オーラスで歌われたのは、まさしく必殺のア・カペラ「No Other Love」。ショパンの「練習曲作品10第3番ホ長調」を原曲にしたナンバーです。シンと静まった店内に、彼女の豊かな歌声で満たされるさまは圧巻でした。公演は本日、明日も続きます。期間限定で提供されるロゼワインを味わいながら、ぜひ新歌姫のステージをお楽しみください!
(原田 2018 3.25)


Photo by Tsuneo Koga

SET LIST

2018 3.24 SAT.
1st
1. COME BACK TO ME
2. ON THE STREET WHERE YOU LIVE
3. TELL ME WHAT THEY’RE SAYING CAN’T BE TRUE
4. WIVES AND LOVERS
5. ALL THROUGH THE NIGHT
6. I’M ALL SMILES
7. LONELY TOWN
8. NOTHING LIKE YOU
9. MAD ABOUT THE BOY
10. I WISH I COULD SHIMMY LIKE MY SISTER KATE
11. ISN’T IT ROMANTIC
EC. NO OTHER LOVE - SOLO
 
2nd
1. LET’S FACE THE MUSIC AND DANCE
2. SPOONFUL
3. IF A GIRL ISN’T PRETTY
4. FINE AND MELLOW
5. THE TROLLEY SONG
6. SO IN LOVE
7. SAM JONES’ BLUES
8. GUESS WHO I SAW TODAY
9. THE BEST THING FOR YOU (WOULD BE ME)
10. SOMEHOW I NEVER COULD BELIEVE
11. DEVIL MAY CARE
EC. JEEPERS CREEPERS

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