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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

グレゴリー・ポーター、ホセ・ジェイムズ、ミルトン・サグス、サシャル(・ヴァサンダニ)、オリ・ダガンなど昨今の男性ジャズ・ヴォーカル界は多士済々ですが、その先輩格にあたるシンガーがカート・エリングです。'90年代半ばにブルーノート・レコーズからソロ・デビューを果たし、コンコード・レコーズを経て現在はカサンドラ・ウィルソンやサシャルもいるオーケー・レコーズ(ソニー傘下)に所属。ますます精力的な活動を行なっています。そして昨日から、彼の2年ぶりの来日公演が始まりました。3月には最新作『Questions』も発売されます。

前回の公演ではマリア・シュナイダー・オーケストラで来日したこともあるゲイリー・ヴァセイスがピアノとオルガン、超売れっ子のケンドリック・スコットがドラムスを演奏していましたが、今回のメンバーも実力派ぞろいです。新たにピアノとオルガンを担当するスチュアート・ミンデマンはこれまでカーク・ウェイラム(先ほど来日したばかりです)、グロリア・エステファン、マーク・ジュリアナらと共演。ドラムスのクリスチャン・ユーマンもハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、マーキス・ヒル、ジェイコブ・コリア―など幅広い世代のミュージシャンをサポートしています。ベテラン・ギタリストのジョン・マクリーン、チャーリー・ヘイデンとダレク・オーレスの教えを受けたベース奏者クラーク・サマーズは前回に引き続いての参加。彼らのプレイもたっぷりフィーチャーされていました。

「何の曲が、どのようなイントロから始まるのだろう」と思いながら開演を待っていたら、始まったのはいきなりエリングのアカペラでした。途端に客席が静まり返り、すべての目と耳は彼の姿に向かいます。ボブ・ディランが1963年に発表した「A Hard Rain's A-Gonna Fall」です。ひとしきり伴奏なしで歌った後、絶妙なタイミングでバンドの音が入り込んできて、グルーヴ感満載のジャズ・ワルツになります。それにしてもエリングのヴォーカルは声よし、リズムよし、ディクションよしで本当にパーフェクトというしかありません。"s""t""d"といった子音のききとりやすさ、ていねいな発音は、故フランク・シナトラに匹敵するものがあるのでは、とぼくは思いました。この曲はまた、『Questions』のオープニングにも収められているとのことです。

さらにライヴ中盤ではカートの友人、TOKUがフリューゲルホーンで登場。レナード・バーンスタイン(ことし生誕100年)の書いた「Lonely Town」、さらにミュージカル『王様と私』からの「I Have Dreamed」を楽しませてくれました。2曲ともスタンダード・ナンバーといえるほどジャズ界に浸透しているわけではありませんが、エリングは親しみやすい語り口でしっかり聴かせ、TOKUのフリューゲルホーンも歌心たっぷり。ほかにもエリングはジャコ・パストリアスの「Three Views of a Secret」に詞をつけた「A Secret in Three Views」など、新作収録曲を満喫させてくれました。

「今日は、ニュー・アルバムのワールド・プレミア・ショウなんだ」と語ったエリング。今日も明日も、新作からの曲をいち早くライヴで届け、ファンを喜びに包むことでしょう。公演は21日まで続きます。

(原田 2018 1.20)

Photo by Takuo Sato

SET LIST

2018 1.19 FRI.
1st
1. A HARD RAIN’S A-GONNA FALL
2. A HAPPY THOUGHT
3. SAMURAI COWBOY
4. A SECRET IN THREE VIEWS
5. LONELY TOWN
6. I HAVE DREAMED
7. THE WAKING
8. DELPHIA
EC. NATURE BOY
 
2nd
1. SPEAK NO EVIL
2. A HAPPY THOUGHT
3. DID YOU CALL HER TODAY?
4. SAMURAI COWBOY
5. LONELY TOWN
6. I HAVE DREAMED
7. LAWNS
EC. BILLIE’S BOUNCE

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