2017 11.10 fri., 11.11 sat., 11.12 sun.
MINGUS BIG BAND
artist MINGUS BIG BAND
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
秋吉敏子、ローランド・カーク、エリック・ドルフィーなどを自身のバンドから輩出し、ジョニ・ミッチェルとも交流。強力無比なベース・プレイと、「Goodbye Pork Pie Hat」(ジェフ・ベックもカヴァーしました)など数多くの名曲で'50~'70年代の音楽シーンを駆け抜けたひとりがチャールズ・ミンガスです。残念ながら1979年に他界してしまいましたが、"ミンガス・ミュージックの灯を絶やしてはならない"とばかりに未亡人のスー・ミンガスがミンガス・ビッグ・バンドを発案。2011年の第53回グラミー賞では、見事、『Live at Jazz Standard 』が最優秀ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバム賞に輝きました。
新陳代謝をはかりながら歴史を重ねているミンガス・ビッグ・バンドですが、今回も要注目の気鋭が多数、集まっています。ローレン・セヴィアンは、おそらく日本の浦朋恵と並ぶ女性バリトン・サックスの代表格でしょう。マーク・ターナーやダニー・マッキャスリンに師事し、一時期はザ・レジェンダリー・カウント・ベイシー・オーケストラでも演奏したことがあります(同楽団の長い歴史上、初めての女性奏者だったとのことです)。チャールズ・ミンガスが生きていた頃のバリトン奏者といえばペッパー・アダムスが定番でしたが(彼も亡くなって30年が経ちます)、ローレンもブリブリ・ゴリゴリとバリトンを吹きます。アダムスの名演が残る「E's Flat Ah's Flat Too」を、"私ならこう吹く"とばかりに熱演するローレンは、今回の来日で一層の注目を集めることになるでしょう。そしてテナー・サックスには、2013年のセロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションでセミファイナリストに選ばれたサム・ディロンがいます。ミンガスが遺した組曲「Epitaph」(すべて演奏すると3時間かかるそうです)からの「Pinky/Please Don't Come Back from the Moon」では、まさしく"マイケル・ブレッカー以後"というべき鮮烈なテナー・プレイで大きな拍手を集めました。フランス生まれのアレックス・テリエは、12歳の時にデューク・エリントン楽団のレコードを聴いてジョニー・ホッジスのプレイに開眼、以来ジャズ一筋という若手。オーケストラではアルト・サックスとソプラノ・サックスを担当、ソロにアンサンブルに大活躍していました。中国系アメリカ人であるピアニストのヘレン・サン、ロシア出身のトランペット奏者アレックス・シピアギンとベース奏者ボリス・コズロフ等、国際色豊かなメンバーが集まっているのもミンガス・ビッグ・バンドの特色です。もちろんコンラッド・ハーウィグ(トロンボーン)、フィリップ・ハーパー(トランペット)、アール・マッキンタイア―(トロンボーン、チューバ)などベテラン勢も健在。「Invisible Lady」では、マルチフォニックス奏法(重音奏法)を駆使したコンラッドの凄まじいカデンツァがフィーチャーされました。
彼らのステージに久しぶりに接して、ぼくは巨匠ミンガスのレガシーが今なお受け継がれ、発展していることを実感できて幸せな気分になりました。これからミンガス・ミュージックの扉を開いてみようというファンも楽しめること間違いなしの、痛快なビッグ・バンド・サウンドです。公演は12日まで続きます。
(原田 2017 11.11)
Photo by Yuka Yamaji
2017 11.10 FRI.
1st | |
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1. | E’s FLAT Ah’s FLAT TOO |
2. | INVISIBLE LADY |
3. | PINKY / PLEASE DON’T COME BACK FROM THE MOON |
4. | NOSTALGIA IN TIMES SQUARE |
5. | O.P. (OSCAR PETTIFORD) |
EC. | SELF-PORTRAIT IN THREE COLORS |
2nd | |
1. | O.P. (OSCAR PETTIFORD) |
2. | SUE’S CHANGES |
3. | TIJUANA GIFT SHOP |
4. | GOODBYE PORK PIE HAT |
5. | JUMP MONK |
EC. | BABY TAKE A CHANCE WITH ME |