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CHUCHO VALDÉS & GONZALO RUBALCABA "TRANCE"

artist CHUCHO VALDES , GONZALO RUBALCABA

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


キューバが生んだ2大ピアノ・ジャイアント、チューチョ・バルデスとゴンサロ・ルバルカバの夢の共演が昨日から開催されています。去る4月30日にハバナで開催された「インターナショナル・ジャズ・デイ・グローバル・コンサート」で行なったデュオ演奏が大きな反響を集め、世界からライヴ・オファーが殺到する中、まさしく待望の来日です。

ステージには、この共演のために用意されたスタインウェイの9フィート・グランドピアノ(いわゆるフルコン)が2台、置かれています。向かって左側のピアノをチューチョ、右側のピアノをゴンサロが演奏します。ふたりはともにキューバを代表する音楽一家の出身です。チューチョの父はべボ・バルデス、ゴンサロの父はギジェルモ・ルバルカバ。よき友人にしてライバルでもあろう名門ファミリー代表者の"音による語らい"は、極上のひと時を提供してくれました。

位置についた二人は、まず鍵盤と戯れるように即興を演じます。互いの音に反応したり、互いの出方をうかがっているうちに、2つのピアノがひとつにとけあって、ゴンサロ作「Joan」のプレイへと進みます。明快な出音、尋常ではなくメリハリに富んだタッチは、まさしく至芸です。チューチョが'80年代から演奏しているオハコ「Mambo Influenciado」をドラマティックに演奏した後は、ゴンサロのMCが入ります。ぼくは彼のライヴを何度も見ていますが、声は初めて聞いた気がします。個人的には「メンバーも曲の紹介もしない、押し黙ったひと」という印象がありました。なのに今日は笑顔で、この日が来るのがどんなに嬉しかったか、チューチョと一緒の時間を過ごすのはステージの上でも外でも本当に勉強になるんだ、と語るのですから驚きました。

チューチョの陽気なキャラクターも相変わらずです。演奏中、ほとんど微笑んだまま大きな手で超絶フレーズを弾きまくっているのですが、ときおり上半身をそらせながら豪快な笑い声をあげていたのが印象的でした。ゴンサロと演奏するのが楽しくて楽しくて、もうたまらないという気持ちがあふれているのです。

エルネスト・レクオーナの名曲「Gitanerias」をドラマティックに演奏し終えた後も、観客の拍手はやみません。登場したふたりがラストに選んだのは、デューク・エリントンの定番「Caravan」。このアレンジも実に面白いものでした。テーマ・メロディの冒頭8小節ではチューチョがメロディ、ゴンサロがバッキングを担当し、次の8小節ではそれが逆転します。やがて両者のプレイは混然一体となり、ひたすら情熱的に盛り上がる、という図式です。ぼくの席からはゴンサロの指先がよく見えたのですが、拳を鍵盤上でくるくる回しながらプレイをしたり、手のひらをまっすぐに伸ばして垂直に降ろす打鍵をしたり、内部奏法(弦を叩く)に取り組んだり、猛烈な速さでオクターヴ奏法を展開したり、エレクトリック・ベースのスラッピング奏法のような感じで左手親指を鍵盤にぶつけたり、芸の細かさに改めて驚嘆させられました。

終演後、チューチョとゴンサロはハグを交わし、ステージを降りました。共演であり、競演であり、協演であり、饗宴でした。ピアノ・ファン、ラテン・ファン、ジャズ・ファン、キューバ音楽ファンを魅了すること間違いなしの夜は24日まで続きます。
(原田 2017 10.23)


Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 10.22 SUN.
1st & 2nd
1. JOAN
2. MAMBO INFLUENCIADO
3. PUNTO CUBANO
4. REPUBLICO
5. GITANERIAS
EC. CARAVAN

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