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AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

artist WILL LEE , 矢野顕子

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


このメンバーで活動を始めて9年。矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカーの黄金トリオが今年も超満員のオーディエンスを熱狂させました。

レパートリーの多さ、守備範囲の広さが尋常ではない3人ですが、ぼくが見た初日のファースト・セットは、沖縄民謡「ちんさぐの花」から始まりました。ウィルがアタックを抑えた"ヴァイオリン奏法"を駆使し、矢野顕子はビートの中を泳ぐようにメロディを紡ぎます。続いては11月29日リリースの新作『Soft Landing』からタイトル曲をいち早く披露。アルバムは7年ぶりの弾き語り作品になりますが、この日はもちろんトリオで密度の濃いパフォーマンスを届けてくれました。ブラッシュを用いたクリスのドラム・プレイは繊細そのもの。こういうリズムで歌えるのは天にも昇る気持ちではなかろうか、と思います。

しっとりした演奏とアグレッシヴな演奏の"差"も、このトリオの魅力です。「Godzilla vs Mothra」は伊福部昭の「ゴジラ」とザ・ピーナッツが歌った「モスラの歌」のマッシュアップといえる楽曲。サウンド・エフェクトも用いながら、三つ巴の熱演が繰り広げられます。矢野顕子いわく「ゴジラとモスラだけではなく、キングギドラも想定した」とのこと。ウィルはエフェクターを駆使し、へヴィ・メタルのギタリストのような音で観客を熱狂させました。

彼はまた、卓越したシンガーでもあります。ダニー・ハサウェイの名曲「Someday We'll All Be Free」では矢野顕子とヴォーカル・パートを分け合い、"明るい日々はもうすぐやってくるよ。いつかみんな自由になれるさ。胸を張って前を向いて歩き続けよう"と熱唱。レッド・ツェッペリンの有名曲のカヴァー「Whole Lotta Love」も、ウィルのリクエストだそうです。この曲をギターなしのバンド、女性ヴォーカルで歌うという発想が、まず痛快です。換骨奪胎といえばいいのでしょうか、矢野顕子のアレンジャーとしての能力に改めて感服させられます。

ウィルがMCパートで「ゴジラとレッド・ツェッペリンをジャズ・クラブで演奏するなんて、こんなユニークなバンドはほかにいないよ」というようなことを話していましたが、まったく同感です。しかもそのユニークさ、演奏のすごみ、テレパシーのような呼応には、ますます磨きがかかっているのです。公演のために特別に用意したオリジナル・ドリンクも大好評。ライヴをご覧になられた多くの方々は、このトリオのパフォーマンスを今年も多いに満喫したことでしょう。
(原田 2017 10.4)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2017 9.30 SAT.
1st
1. ちんさぐの花
2. Soft Landing
3. Welcome to Jupiter
4. Godzilla vs Mothra
5. Someday We’ll All Be Free
6. All The Bones Are White
7. Whole Lotta Love
8. ラーメンたべたい
EC. Rose Garden
 
2nd
1. ちんさぐの花
2. Soft Landing
3. Welcome to Jupiter
4. Godzilla vs Mothra
5. Someday We’ll All Be Free
6. All The Bones Are White
7. Whole Lotta Love
8. ラーメンたべたい
EC1. Rose Garden
EC2. ひとつだけ

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