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BILL FRISELL : WHEN YOU WISH UPON A STAR featuring PETRA HADEN, THOMAS MORGAN & RUDY ROYSTON

artist BILL FRISELL , PETRA HADEN

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


今週のブルーノート東京は、名ギタリストの登場が続きます。ジョン・トロペイに続いて、昨日からはビル・フリゼールの公演が行われています。

フリゼールはこの1月上旬、チャールズ・ロイドのバンド"マーヴェルズ"の一員として登場し、絶好調のプレイを聴かせたばかり。それから半年もたたないうちに、自身のユニットで戻ってきてくれたのは「嬉しい」のひとことです。彼はオリジナル曲と共に、よく知られたポップス・ナンバーも数多く演奏します。その解釈が、また絶品なのです。あまりにもよく知られたメロディが、彼独特のト―ン、ハーモニー、リズム感によって、新鮮そのものの響きとして呈示されていきます。それは、まるで錬金術のようです。

ぼくが見た初日も、「こんな有名で古典的な曲が、これほどまでにフレッシュに生まれ変わるなんて!」と声をあげたくなることが何度もありました。共演メンバーはルディ・ロイストン(ドラムス)、トーマス・モーガン(ベース)、ペトゥラ・ヘイデン(ヴォーカル)という実力者たち。ぼくはいきなり冒頭の「When You Wish Upon a Star」でノックアウトされました。フリゼールもモーガンもロイストンも明確なリズムを刻みません。彼らは絡み合うように音を出して、幻想的なムードを生み出します。そこにペトゥラの清らかで伸びのある歌声がスッと入り込みます。それぞれが自分の体内にあるリズムに従いながら、四者四様の"星に願いを"を表現し、それが重なりあって、シンフォニーのような音の厚みで迫ってくる、といえばいいでしょうか。

プログラムの中盤では、同名異曲を続けて演奏するという面白い趣向も見せてくれました。ひとつはバート・バカラックが作曲し、ディオンヌ・ワーウィックやシラ・ブラックの歌でヒットした「Alfie」、そしてもうひとつはサックス奏者ソニー・ロリンズが書いた「Alfie」です。前者はペトゥラの美声のショウケースというべきアレンジで、フリゼールはそこにぴったり寄り添うようなコード(和音)で"歌伴の名手"ぶりをいかんなく発揮します。そして後者では、モーガンとロイストンが刻む歯切れ良い4ビートにのって、「グルーヴィー」と呼びたくなるような長尺のアドリブを披露。ぼくはロン・カータ―やエルヴィン・ジョーンズとの共演盤など、いわゆるモダン・ジャズの巨星と演奏しているフリゼールのアルバムも聴いています。しかし、ここまでモダン・ジャズを感じさせる彼のアプローチを聴いたのは、この日が初めてです。まさかロリンズのヴァージョンに入っているケニー・バレルのプレイを意識したわけではないでしょうが、フリゼールがここまで"ジャズ保守本流"に徹したプレイを行なうとは、完全に予想外でした。

公演は18日まで続きますが、1回として同じセットリストがないとのこと。多彩なレパートリーを持っているフリゼールだけに、どんな曲がどんなアレンジで提供されるのか、期待はいやがおうにも高まります。
(原田 2017 6.16)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2017 6.15 thu.
1st
1. WHEN YOU WISH UPON A STAR
2. IT CHANGES
3. TO KILL A MOCKINGBIRD, PART1&2
4. ALFIE
5. ALFIE’S THEME
6. LUSH LIFE
7. YOU ONLY LIVE TWICE
EC. WHAT THE WORLD NEEDS NOW
 
2nd
1. MOON RIVER
2. THE GODFATHER
3. THE SHADOW OF YOUR SMILE
4. ONCE UPON A TIME IN THE WEST
5. BAMA DRAMA
6. THE WINDMILLS OF YOUR MIND
7. GOLDFINGER
EC. WHAT THE WORLD NEEDS NOW

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