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MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA

artist DONNY McCASLIN , MARIA SCHNEIDER ORCHESTRA

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


「おかえりなさい!」という声が、あちこちから聞こえてきそうです。現代ジャズ・アンサンブルの英知、マリア・シュナイダー・オーケストラが2013年12月以来、久しぶりに「ブルーノート東京」に戻ってきてくれました。

その間の3年7か月に『Winter Morning Walks』と『The Thompson Fields』をリリース、グラミー賞では3部門を獲得しています。また14年にはデヴィッド・ボウイ(16年死去)が発表した「Sue (Or In A Season Of Crime)」でコラボレーションを行ない、話題を集めたのも記憶に新しいところです。いいかえれば今回の公演は上記2枚の発表後、およびボウイとのコラボ後、初めての日本公演にあたるのです。

公演は6月7日から11日にかけて5日間連続で開催されます(計10セット)。ぼくは初日のファースト・セットに足を運びましたが、いきなり、狂おしいほどの叙情と刺激があふれたサウンドに包まれて高揚しました。メンバーはいうまでもなく、選りすぐりの名手ばかり。トランペットのマイク・ロドリゲスは秋吉敏子&ルー・タバキン・ビッグ・バンドやチャーリー・ヘイデン・リベレイション・ミュージック・オーケストラ(ヘイデンの死後はスティーヴ・スワロウがベースを担当)に在籍していたことがあり、グレッグ・ギズバートはロン・カーター・オーケストラやクリスチャン・マクブライド・オーケストラにも参加していたビッグ・バンドのスペシャリストです。トロンボーンのキース・オクインはボブ・ミンツァー・ビッグ・バンドでの来日経験も持ち、テナー・サックスのリッチ・ペリーは'70年代から末期のサド・ジョーンズ=メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ(現ヴァンガード・ジャズ・オーケストラの原型)やグレン・ミラー・オーケストラなどで活動してきた大ベテランです。ベースのジェイ・アンダーソンも数多くのビッグ・バンドから参加を請われる名手で、秋吉敏子、ジョルジュ・グルンツ、ケニー・ホイーラーなど無数の才人の音作りに関わってきました。もちろんテナー・サックスのダニー・マッキャスリン(この2月に自身のユニットで登場したばかり)、アコーディオンのゲイリー・ヴァセイス、ドラムスのクラレンス・ペン(9月に小曽根真ザ・トリオで再来日します)といった気鋭たちのプレイも存分にフィーチャーされています。さまざまな経験を持つさまざまな世代の凄腕が、マリアの陰影に富んだ作編曲を一丸となって送り届ける・・・・これをライヴで体験する喜びが今、東京で味わえるのです!

また、個人的に当公演の「ツボ」だと思ったのは、マリアの初期アルバム『Evanescence』や『Coming About』のメンバーでもあったギター奏者ベン・モンダーの参加です。彼がマリアのオーケストラの一員として来日したのは今回が初めて。ポーカーフェイスを維持しながら、エフェクターを駆使した多彩な音色を用いて、あらゆる慣用句を捨て去ったかのようなフレーズづくりを行なう彼のプレイは、当公演の大きな見ものであり聴きものであると断言していいはずです。初日ファースト・セットの演目はマリアの出世作のタイトル曲「Concert in the Garden」、リッチ・ペリーのショウケースというべき「Rich's Piece」、デイヴ・ピエトロのアルト・サックスとマイク・ロドリゲスのディレイをかけたトランペットが壮絶なソロのやりとりを繰り広げ、フランク・キンブロウがピアノの弦をかきむしる「Data Lords」等。バリトン・サックス、ギター、ピアノ、ベース、アコーディオンが一斉にベース・ラインを奏でる「Dance You Monster」の迫力にものけぞりました。マリア・シュナイダー・オーケストラ、果たして今日からの4日間8セットでは、どんな"音楽の旅"へ案内してくれるのでしょうか。
(原田 2017 6.8)


Photo by Yuka Yamaji


●スティーヴ・ウィルソン(as)が8月に再来日!
THE COREA / GADD BAND
2017 8.28 mon., 8.29 tue., 8.30 wed., 8.31 thu.  ブルーノート東京
詳細はこちら

●クラレンス・ペン(ds)が9月に再来日!
小曽根真 ザ・トリオ
2017 9.8 fri., 9.9 sat., 9.12 tue., 9.13 wed.  ブルーノート東京
詳細はこちら

SET LIST

2017 6.7 WED.
1st
1. CONCERT IN THE GARDEN
2. EL VIENTO
3. RICH’S PIECE
4. DANCE YOU MONSTER TO MY SOFT SONG
5. WALKING BY FLASHLIGHT
6. DATA LORDS
 
2nd
1. THAT OLD BLACK MAGIC
2. TORK’S CAFE
3. THE MONARCH AND THE MILKWEED
4. A POTTER’S SONG
5. PAS DE DEUX
6. COMING ABOUT
7. ALL NIGHT, IN GUSTY WINDS

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