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Celebrate "International Jazz Day" with BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO with special guest PETER ERSKINE

artist BLUE NOTE TOKYO ALL JAZZ ORCHESTRA , PETER ERSKINE

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


毎年4月30日は、ユネスコが制定した"インターナショナル・ジャズ・デイ"です。千代田区ワテラスでは28日から30日にかけて屋外イベント「JAZZ AUDITORIA 2017 in WATERRAS」が行なわれましたが、この30日にはブルーノート東京でも連動イベントが開催されました。ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロが、百戦錬磨の人気ドラマーであるピーター・アースキンを迎えて"ジャズの日"を祝うのです。

小池修のテナー・サックスが炸裂する「Trains」、5本のフリューゲルホーンの柔らかな響きや佐野聡のハーモニカにスポットが当たる「Three Views of a Secret」で会場を熱狂させた後、いよいよドラムスの椅子にピーターが座ります。日本ではなによりもウェザー・リポートやジャコ・パストリアス"ワード・オブ・マウス・ビッグ・バンド"の元メンバーとして名前が刻まれているのでしょうが、メイナード・ファーガソンやスタン・ケントンのオーケストラでも演奏経験があり、ヴィンス・メンドーサら数々の名アレンジャーとも交友を重ね、あの大ヒット映画「ラ・ラ・ランド」のサウンドトラックにも名を連ねている超オールマイティなミュージシャンです。個人的には'90年代に英国の伝説的ピアノ奏者ジョン・テイラーと共にECMレーベルに残した諸作、近年ではアルメニアの鬼才ピアノ奏者ヴァルダン・オヴセピアンとのコラボレーションも必聴だと思います(5月10日、コットンクラブでピーターとヴァルダンは共演します)。

この日、ピーターが叩いたナンバーの数々は、彼の音楽歴を反映した幅広くユニークなものでした。「9歳の時にサマー・キャンプ(音楽家志望の学生のための夏期講習)に参加した時に演奏した」という前置きでプレイされたのは、オリヴァー・ネルソン作「Hoe Down」。一部のフレーズがハンス・ダルファーの「Mickey Mouth」に引用されているので、聴き覚えのあるリスナーも多いのではないでしょうか。ピーターは笑顔を浮かべて、歯切れよい4ビートを刻みます。「私は1974年、スタン・ケントン・オーケストラの一員として初めて日本を訪れた。今日はこの曲をケントンのレパートリーから用意した。初演は1947年、ドラマーはシェリー・マン、作編曲はピート・ルゴロだ」というMCから始まったのは、「Artistry in Percussion」。ピーターはマレットとスティックを持ち替えて、華麗なプレイでドラムスのメロディ楽器としての一面をクローズアップします。作曲されてから70年が経つナンバーですが、その衝撃、前衛性はいまなお薄れてはいません。

客席ではエリックともピーターとも親交の深いピアニスト、小曽根真が演奏に聴きいっています。それに気づいたエリックが彼をステージに呼びあげ、始まったのはサド・ジョーンズ作「Little Pixie II」。もちろん小曽根が大きくフィーチャーされ、ピーターと顔を見合わせながらの技の応酬に場内はさらに沸きます。ジャズのルーツのひとつであるアフリカと、先祖の出身地であるスコットランドに思いを寄せたピーターの自作「Scotland, Africa」では青柳誠のキーボードが冴えわたり、ジャコ・パストリアス作「Domingo」では納浩一のベースとピーターが切れ味鋭い"音の会話"を繰り広げました。ジャコは『ザ・バースデイ・コンサート』というアルバムにこの曲の決定版を残していますが、そこでドラムスを担当していた人物こそピーターです。彼が叩く「Domingo」を、この2017年に目の前で聴ける...、胸が熱くなったのは自分だけではないでしょう。

オーラスは、ウェザー・リポート在籍中にジャコが発表した代表的一曲「Teen Town」。オーケストラのレギュラー・ドラマーである岩瀬立飛とピーターのツイン・ドラムは迫力、音の厚みともに絶品。ウェザーのスタジオ・ヴァージョンは3分に満たなかったと記憶していますが、この日のパフォーマンスは熱狂的なソロの連続で10分は超えていたように思います。すべての演奏を終えたメンバーがバンドスタンドを離れたのは、ちょうど21時半ごろ。日本屈指のオーケストラとアメリカが誇るスター・ドラマーは、2時間にわたって息つく間もないほどの熱演を繰り広げたのでした。
(原田 2017 5.1)


Photo by Takuo Sato

SET LIST

2017 4.30 SUN.
1st
1. Trains
2. Three Views of a Secret
3. Still of the Night
4. Hoe-Down
5. Artistry in Percussion
6. Stompin’ at the Savoy
7. Oops
8. Little Pixie II
9. Scotland, Africa
10. That’s Rich
11. Domingo
EC1. Sunday Morning
EC2. Teen Town

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