LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


RAUL MIDÓN TRIO

artist RAUL MIDÓN

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


"ジ・インコンパラブル"(=比類のない)というアナウンスを受けて、本日の主役が颯爽と登場します。鬼才シンガー・ソングライター、ラウル・ミドンのステージです。前回の来日はまったくの弾き語りソロ・パフォーマンスでしたが、今回はバンド形式で楽しませてくれました。

レパートリーは、先ごろリリースされたばかりの、スーパーマンのようなジャケット・デザインも印象的な最新作『Bad Ass and Blind』からのものが中心。オープニングの「Pedal To The Metal」から、弦を叩きながら同時に引っ張るようなアコースティック・ギター奏法、しかもリード・ギターとサイド・ギターを同時に演奏しているような独特のアプローチが炸裂します。CDでは短めだった「Sound Shadow」も、ライヴではアドリブを織り交ぜながら、たっぷり聴かせてくれます。リズムは恐らく6拍子、曲調はどこかホレス・シルヴァーのそれ(「Senor Blues」「The Jody Grind」等)を彷彿とさせるのもいいところです。タイトル曲では得意技の"口(くち)トランペット"が炸裂、ギターとの一糸乱れぬユニゾンで客席から盛大な拍手を引き起こしました。

エレクトリック・ベースとアコースティック・ベースを使い分けたロミアー・メンデスは米国メリーランド州出身。ヴィブラフォン奏者ウォーレン・ウルフや、クリスチャン・スコットの叔父であるサックス奏者ドナルド・ハリソン等との共演経験もあります。ドラムスのビリー・ウィリアムスは米国ヴァージニア州出身。エリス・マルサリス、ジョン・ファディス、ダイアン・リーヴス等のサポートを務めてきました。つまりふたりはアコースティック・ジャズ畑で活動することの多い奏者なのですが、ファンク調もラテン調の思いのまま。彼らの打ち出すしなやかなリズムも、この日のライヴの聴きものになっていたことはいうまでもありません。

プログラム後半にはソロ・コーナーも挿入され、"すごく昔、ルイ・ヴェガのところで歌った曲なんだ"と「Sunshine (I Can Fly)」を、「左手でギターの弦を押す+右手でボンゴを叩く+超絶的な歌&スキャット」の組み合わせで聴かせてくれました。思えばラウルの「ブルーノート東京」初登場は、ヴェガのプロジェクト「エレメンツ・オブ・ライフ」でした(2003年)。ぼくはそのときに彼の実演に初めて接し、感銘を受けたまま現在に至っています。

公演は6日まで続きます。才能の玉手箱というべき男、ラウル・ミドンの真髄をご体感ください!
(原田 2017 4.5)


Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2017 4.4 TUE.
1st
1. PEDAL TO THE METAL
2. SOUND SHADOW
3. BAD ASS AND BLIND
4. YOU & I
5. IF ONLY
6. SUNSHINE (I CAN FLY)
7. I CAN'T LOVE YOU
8. ALL THAT I AM
9. RED, GREEN, YELLOW
10. WAS IT EVER REALLY LOVE?
11. STATE OF MIND
 
2nd
1. MI AMIGO CUBANO
2. WAITED ALL MY LIFE
3. BAD ASS AND BLIND
4. SUDDENLY
5. SUNSHINE (I CAN FLY)
6. RIDE ON A RAINBOW
7. WINGS OF MIND
8. IF ONLY
9. THERE IS NO GREATER LOVE
EC. STATE OF MIND

INDEX