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ROY HARGROVE QUINTET

artist ROY HARGROVE , 海野雅威

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


軽やかなステップでステージまで歩き、笑顔で観客に語りかけ、盛大な拍手を受けて深くお辞儀をし、曲によってはダンスもし、ときには何コーラスも吹きまくり、吹き終わった後にガッツポーズをとる・・・

こんな彼の姿を見ることができるとは思いませんでした。「ロイ・ハーグローヴは絶好調」、大きな声でそういいたくなりました。しかもバンド・メンバーが全員、猛烈にスウィングします。もうおなじみといっていいであろうジャスティン・ロビンソン(アルト・サックス)とアミーン・サリーム(ベース)に、今回はクインシー・フィリップス(ドラムス)、海野雅威(ピアノ)が加わります。とくにハンク・ジョーンズの愛弟子であったという海野は粒立ちの良いシングル・トーン、洒落たハーモニーで間違いなくグループに新たな魅力を付け加えていました。

ロイのバンドは事前に演奏曲を決めず、リーダーの気持ちひとつでプログラムが進行します。この日、プレイされた曲も幅広い範囲にわたっていました。ジョー・ヘンダーソン作「A Shade of Jade」あり(偶然にも、先日のRC&ザ・グリッツ公演でもジョーの楽曲がカヴァーされていました)、ラテンの定番「Besame Mucho」あり、アントニオ・カルロス・ジョビン作「Antigua」あり、と、国境を超えていろんなレパートリーが次々と登場します。すっかり定番となったヴォーカル・コーナーでは、タッド・ダメロン作「Lady Bird」とサム・クックの「Soothe Me」が歌われました。「Lady Bird」はファッツ・ナヴァロ、マイルス・デイヴィス、ケニー・ドーハム(ロイと同じくテキサス州出身)、チェット・ベイカーなど数多くの伝説的トランペット奏者がとりあげてきたナンバーですが、これに歌詞がついていたとは、ぼくは初めて知りました。ロイはリズミカルに歌った後、ミュートをつけたトランペットで軽やかにアドリブをとりましたが、これもまた豊かな歌心を感じさせる見事なものでした。

ロイ最大の人気オリジナル曲といっていいであろう「Strasbourg-St. Denis」のあとは、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズやマイルス・デイヴィス・クインテットが演奏した「The Theme」へ突入します。しかしハーモニーやリズム・パターンはタイムレス・オールスターズ(シダー・ウォルトン)の編曲に則っていたようです。さらにここでは、クリフォード・ブラウン「Gertrude's Bounce」やチャーリー・パーカー「Steeplechase」のメロディも引用、"モダン・ジャズの伝統を今日に伝えるのは俺たちだ"という声が聴こえてきそうな快演に、胸が熱くなったのはぼくだけではないはずです。公演は3月3日まで続きますが、ロイはさらに元気に各セットを突っ走ってくれることでしょう。
(原田 2017 3.1)


Photo by Tsuneo Koga

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