原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ロック史上に燦然と輝くスーパー・グループ、ザ・ヤードバーズ。彼らのライヴを、この２０１６年の東京で楽しめるとは！　25日に行なわれるブルーノート東京公演に先立って、ぼくは22日のコットンクラブ公演に足を運びました（コットンクラブには、本日23日まで登場します）

結成は１９６３年、ロンドンにて。エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジといったスター・ギタリストを輩出し、'６８年にいったん解散します。しかし'９２年にロックンロール・ホール・オブ・フェイム（名声の殿堂）に選ばれたのをきっかけに、オリジナル・メンバーのジム・マッカーティ（ドラムス、ヴォーカル）とクリス・ドレヤ（ギター。2013年、健康上の理由により脱退）を中心とする新ラインナップで活動を再開。２００３年のアルバム『Birdland』には元メンバーのベックだけではなく、ブライアン・メイ、ジョー・サトリアーニ、スラッシュ、スティーヴ・ヴァイなど錚々たるギター・ヒーローがゲスト参加し、「さすが"ブルース・ロックの名門""ハード・ロックの先駆"だ！」と唸ること必至のサウンドで喜ばせてくれました。

今回の来日公演は、ジム、マイク・スキャヴォーン（ハーモニカ、パーカッション）、ケニー・アーロンソン（ベース）、ジョン・アイダン（リード・ヴォーカル、ギター）、ジョニー・Ａ（ギター）という顔ぶれで行なわれています。ジム以外は全員アメリカ人。ジョンは2009年に脱退しましたが、昨年再加入しました。ソロ名義ですでに「コットンクラブ」に登場しているジョニー・Ａも縦横無尽にギターを歌わせていました。クラプトン、ベック、ペイジの後任というプレッシャーは並大抵ではないと思いますが、「それはそれ、俺は俺」という感じで、人の声のようにエモーショナルで抑揚に富んだトーンで弾きまくります。ジョニーはベックに加え、ジミ・ヘンドリックス、ダニー・ガットン、パット・マルティーノ、ウェス・モンゴメリーなどからも影響を受けているそうです。ロック、カントリー、ジャズの要素がミックスされたジョニーのプレイは、現ヤードバーズの魅力の要といっていいでしょう。

演目は「Heart Full of Soul」「For Your Love」「Shapes of Things」「Train Kept A-Rollin' 」「Smokestack Lightning」「Little Games」「Over Under Sideways Down」などなど。ファンの方ならタイトルを見るだけで音が浮かんでくることでしょう。そうです、その楽曲を目の前で鳴らしてくれるのです。「Back Where I Started」は、この日唯一のジムのリード・ヴォーカル曲。はっきりいって枯れた歌声でしたが、その"枯れ"はそのまま、ミュージシャンとして半世紀以上の歳月を過ごした彼の年輪なのでしょう。

ヤードバーズ出現から50数年、ロックは進化と発展を続けました。しかしリフ（短いフレーズ）の反復とブルースを根底に持つサウンドが古びることは永遠にありません。ぼくは「ヤードバーズは初耳」「ヴィンテージ・ロックにはなじみがなくて」というひとに、むしろ見てほしいと思いました。ロックのエッセンスのひとつが、ここにあります。
(原田 2016 10.23）

Photo by Takuo Sato

●THE YARDBIRDS
10.21 fri., 10.22 sat., 10.23 sun.　コットンクラブ

2016 10.25 tue. 　ブルーノート東京