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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


説明不要のギター・ヒーロー、リー・リトナーが新メンバーを引き連れたグループで来日中です。

11日には「Six String Theory Competition-Winner's Circle-」(世界中から音楽の若き才能を発掘・育成することを目的としたコンペティション)という特別プログラムで快演し、準備も万全といったところでしょうか。自身のグループによる公演は、12日の初日ファースト・セットから熱く炸裂しました。彼のアルバムは1曲が短くまとめられ、BGM的にあっさりと楽しめる者が多いですが、ライヴではギターをこれでもかと弾き、ときに掛け声をあげながら弦をかき鳴らします。ぼくは'90年代から彼のライヴを見ていますが、「今回はまた格別にハードだなあ」というのが第一印象です。

リズム・セクションの刺激的なサポートも、リトナーの音楽家魂をかりたたせるのでしょう。メンバーは全員ロサンゼルス在住ですが、出身地や世代は違います。ピアノとキーボードのオトマロ・ルイース(1964年生まれ)はベネズエラ生まれで、アルトゥーロ・サンドバール、ジノ・ヴァネリ、ハーブ・アルパートらとの共演でも知られる名手。5弦エレクトリック・ベースのアドリアン・フェローは1984年フランスのパリ生まれ。12歳の時にジャコ・パストリアスのCDを聴いてベース奏者を志し、ジョン・マクラフリンやチック・コリアとの共演で頭角を現しました。ドラムスのウェスリー・リトナーは、リー・リトナーの息子です。5歳でドラムスを始め、2006年、13歳の時に父のアルバム『Smoke n' Mirrors』でレコーディング・デビューを果たしました。ラリー・カールトンの息子トラヴィス・カールトン、故ジョー・サンプルの息子ニック・サンプルらと共に、フュージョン新世代を担うサラブレッドといっていいでしょう。

そして主役のリー・リトナーは今年64歳です。'70年代半ばのソロ・デビュー以来、陽の当たる大通りを常に歩んでいる印象がありますが、ピック弾き、指弾き、オクターヴ奏法、スライド奏法などを取り混ぜたプレイはいまだ輝かしいままです。ぼくの見たファースト・セットは古くからのファンにはおなじみであろう曲が多めでしたが、たとえばアントニオ・カルロス・ジョビン作の「Stone Flower」(カルロス・サンタナの愛奏曲でもありますね)は、まずオトマロのピアノの内部奏法から始まり(ピアノに張られている弦を引っかく)、そこから軽快なサンバのリズムに移り変わるというものです。かつてのリトナーはこの曲をナイロン弦のエレアコ・ギターで弾きましたが、今回はフルアコースティック・タイプのエレクトリック・ギター1本でバリバリと演奏します。これ1曲で15分は続いたでしょうか。彼の中に確かに流れているジャズのルーツを感じさせるアドリブ・プレイに、ぼくはリトナーの師匠である故ハワード・ロバーツのアルバム『アンテロープ・フリーウェイ』を思い出しました。そしてオリヴァー・ネルソン作「Stolen Moments」では、ヴォリューム・ペダルを駆使したアドリアンのベース・ソロもフィーチャー。途中から倍テンポになり、レス・ポール・モデルに持ち替えたリトナーは高速フレーズで客席を盛り上げます。これまたおなじみの「Rio Funk」も、ウェスリーとの親子デュオをはさむ怒涛の展開に。ドラムに近寄ってギターを弾きまくる父親と、一歩も引かずにタイトなリズムを送る息子の姿に、ぼくはフュージョン・ミュージックの豊かな歴史を感じずにはいられませんでした。90分のパフォーマンスを満喫した後に訪れたのは、痛快なカタルシスです。公演は14日まで続きます。
(原田 2016 9.12)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2016 9.12 MON.
1st
1. THE VILLAGE
2. STONE FLOWER
3. PEARL
4. WES BOUND
5. STOLEN MOMENTS
6. SOARING
EC. RIO FUNK
 
2nd
1. THE VILLAGE
2. WALTZ FOR CARMEN
3. WES BOUND
4. IMPROVISATION
5. STONE FLOWER
6. OOH YEAH
7. LAY IT DOWN
EC. A LITTLE BIT OF THIS

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