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The EXP Series #06 / SHUN ISHIWAKA CLEANUP TRIO meets KURT ROSENWINKEL

artist KURT ROSENWINKEL , 石若駿

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


音楽の明日を担うドラマーのひとり、石若駿が遂にリーダーとしてブルーノート東京に登場しました。2011年5月には大黒摩季のバックで出演したことがありますが、今回はジャズです。自身の"クリーンナップ・トリオ"にカート・ローゼンウィンケルを迎えた、1日限りのスペシャル・ライヴに胸が高まります。

出身はジャズ・ミュージシャンの名産地といえる北海道。12歳の頃から日野皓正と共演し、その才能は日野の自伝「逆光」でも賞賛されています。札幌ではハービー・ハンコック、マーカス・ミラーらのオープニング・アクトを務め、2015年に東京藝術大学打楽器科をトップの成績で卒業しました。ぼくのように何十年もジャズを追っている者は"藝大の打楽器科"というだけで白木秀雄や森山威男の名を思い浮かべ、"十代の頃から第一線で活躍"というフレーズをきいただけで富樫雅彦、奥平真吾、本田珠也など歴代の天才ドラマーのプレイが頭に鳴り響きます。ぼくは今回、いろんなウェブサイトにアップされている石若のインタビューを読んでからライヴに向かったのですが、とにかく感性が柔軟で話に広がりがあるひと、という印象を受けました。そこに抜群のテクニックと作曲能力が加わるのですから、鬼に金棒でしょう。しかも昨年12月にリリースした初のフル・リーダー・アルバム『CLEANUP』は「JAZZ JAPAN AWARD」「jazzlife DISC GRAND PRIX」を獲得し、さらに石若個人も「ミュージック・ペンクラブ音楽賞 新人賞」に輝いています。権威ある、伝統的なメディアも、彼のアートをしっかり認めているわけです。

「プログラムの途中あたりからカートが加わるのかもしれないな」と思っていたのですが、とんでもない。1曲目「Cleanup」から石若、カート、井上銘、須川崇志が一体となったプレイが繰り広げられました。「もうこのメンバーで何年も一緒にツアーしてきたんだよ」といわれても疑いが持てないほどアンサンブルはよくまとまり、ソロも快調に続きます。ベースの背後で光るブラッシュの妙技、ギタリストふたりとの8バース(ソロ交換)における歌うようなドラム・ソロ。石若の"ただものでなさ"が発揮されます。富樫雅彦の「Waltz Step」をとりあげるセンスの良さはもちろん、ミステリアスな部分を井上、よりメロディアスな部分をカートが担当した意欲的な自作「The Boomers」、組曲風の構成で迫る「Big Sac」と、演奏レパートリーはどれも時間を忘れさせるものばかり。オーラスではチャーリー・パーカーが1951年に書いた古典「Au Privave」がプレイされましたが、カートはスキャットとギターをダブらせながらの熱演。'90年代初頭、彼がポール・モチアン"エレクトリック・ビ・バップ・バンド"の一員としてプレイしていた頃を彷彿とさせる、鋭くてクールなカートなりの"モダン・ジャズ"に酔いしれました。

4者のステージは大成功に終わりました。そしてカートは7月2日と3日に、自身のトリオで「コットンクラブ」に登場します。フレーズの組み立て、作曲能力、エフェクターの用い方など、彼こそ現代ジャズ・ギターの"長兄"であり、オピニオン・リーダーであるとぼくは確信しています。カートの音楽世界を、ぜひ「コットンクラブ」でお楽しみください。
(原田 2016 6.29)

Photo by Tsuneo Koga

●KURT ROSENWINKEL TRIO
2016 7.2 sat., 7.3 sun. コットンクラブ
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SET LIST

2016 6.27 MON.
1st
1. CLEANUP
2. TAIJI SONG
3. WALTZ STEP
4. THE BOOMERS
5. CHELSEA BRIDGE
6. BIG SAC
EC. AU PRIVAVE
 
2nd
1. CLEANUP
2. TAIJI SONG
3. WALTZ STEP
4. THE BOOMERS
5. WHEN SUNNY GETS BLUE
6. UNTITLED No.1
7. BIG SAC
EC. EVIDENCE

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