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MICHEL CAMILO TRIO with CLIFF ALMOND & LINCOLN GOINES

artist CLIFF ALMOND , MICHEL CAMILO

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


"このピアノ、すごく大きいんじゃないか?"

ステージを見て、まずその言葉が思い浮かびました。そうです、今回のライヴのために、特別に大型のスタインウェイ・ピアノが運び込まれたのです。横幅は広く、見かけはゴツい。これを弾きこなすのは一大事業だと思いつつも、このピアニストの強力なタッチや高速の指さばきにそのへんの楽器では対応できないのでは、とも思います。ピアノ道を極めつづけるミシェル・カミロの超絶ライヴを「ブルーノート東京」で味わえる機会が、今年もやってきました。

共演メンバーはリンカーン・ゴーインズ(ベース)、クリフ・アーモンド(ドラムス)。カミロとは一心同体というべき、長年の演奏仲間です。ソロ・ピアノ、ギター奏者トマティートとのデュオ、シンフォニー・オーケストラとの共演、管楽器3人を加えたセクステット、そしてビッグ・バンドと、いろいろなフォーマットに取り組んで自身の音楽性を育んできたカミロですが、トリオ編成の彼こそ最高と考えるファンも多いのではと思います。気心の知れたミュージシャンと、超絶技巧を駆使しながらも、まるで会話するようにプレイするカミロの姿は本当に楽しそうです。しかも去る4月4日、彼は誕生日を迎えたばかり(「バースデイ・ウィークに日本で演奏できてとてもうれしい」というMCもありました)。そのためか場内は、なんともいえない華やかなムードに包まれていました。

オープニングは「From Within」。ラテン・ジャズを特集したヒット映画「カジェ54」でも演奏されていた、定番中の定番です。映画ではアンソニー・ジャクソンがコントラバス・ギターを弾いていましたが、この日はリンカーン・ゴーインズがウッド・ベースをプレイします。カミロは情熱的なリフレインを何度も何度も繰り返し、クリフはカウベルやウッドブロックを仕込んだ独自のドラム・セットで縦横無尽に叩きまくります。ラテンの熱気とジャズの勢いが、いきなりスパークしました。かと思えば伝説のジャズ・トランペット奏者リー・モーガンが書いた「The Sidewinder」はニューオリンズR&B風のリズム・パターンで始まり、かと思えば後半部分でのピアノとドラムスの絡みはソン・モントゥーノ調に変化するという二部構成。デューク・エリントン楽団の一員だったフアン・ティソール(プエルトリコ出身)が作曲した「Perdido」では、イントロ部分でまずオスカー・ピーターソン風の豪快なオクターヴ奏法を聴かせ、つづいてテーマ部分をロックト・ハンズ(ブロック・コード)で奏でつつ、アドリブ・パートに入ると目にもとまらぬ指使いで"カミロ節"をまきちらしました。

「私はいままで23枚のアルバムを出してきた。今回の出演では、その中から新旧とりまぜて、いろんな曲を演奏するよ」と語るカミロ。どんな曲が聴けるかは、その日のお楽しみ。大型ピアノを鳴らしきる"黄金の腕"を、ぜひかぶりつきでごらんください。公演は12日まで続きます(10日はオフ)。
(原田 2016 4.8)

SET LIST

2016 4.7 THU.
1st
1. FROM WITHIN
2. A PLACE IN TIME
3. THE SIDEWINDER
4. REMEMBRANCE
5. PERDIDO
6. DANZA LUCUMI
7. THIS WAY OUT
EC. AND SAMMY WALKED IN
 
2nd
1. TOMBO IN 7/4
2. MY SECRET PLACE
3. AT NIGHT
4. DESCARGA FOR TITO
5. IF YOU KNEW
6. TAKE FIVE
7. ON FIRE
EC. PIECE OF CAKE

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