原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

イタリア生まれの人気プロデューサーが、選りすぐりの精鋭と共に繰り広げるモーダルな空間。ニコラ・コンテ・ジャズ・コンボが今年も満員のオーディエンスを沸かせています。

メンバーはマグヌス・リンドグレン（テナー・サックス、フルート、クラリネット：スウェーデン）、ピエトロ・ルッス（ピアノ：イタリア）、ルカ・アレマノ（ベース：イタリア）、ロベルト・イキス（ドラムス：トルコ）、松岡 "matzz" 高廣（パーカッション：日本）、そしてリーダーのニコラ・コンテ。ニコラは水色のジャケットを着て、赤いギターを奏でます。その色使いもまた、強い印象を残しました。

アルバム『ラヴ＆レヴォリューション』に入っていた「All Praises to Allah」で華々しく幕を開けた後、歌姫アリーチェ・リチャルディが登場します。2008年にアルバム『カムズ・ラヴ』で華やかに国内デビューを飾った彼女ですが、それからもう8年。歌声はさらに輝きと熟成を増しています。ぼくは09年にニコラ・コンボとアリーチェの共演をやはり「ブルーノート東京」で聴き、相性の良さに感じ入った記憶があるのですが、今回も見事なコンビネーションで、様々な名曲を楽しませてくれました。アリーチェに限らず、グレゴリー・ポーター、ホセ・ジェイムズ、ザラ・マクファーレンなど、ニコラのヴォーカリスト選びのセンスは天才的といっていいでしょう。

ノーマン・コナーズの「Love From The Sun」やナット・キング・コールの定番「Nature Boy」などがラテン風やモード風にカヴァーされるのも、このグループならでは。激しいアクションで豪快に吹きまくるマグヌスが目と耳の両方を奪います。アルバム『リチュアル』からの「I See All Shades Of You」は、ストップ・タイム（ベース以外のミュージシャンが休む）を効果的にフィーチャーしながらの熱演。後半では古いスタンダード・ナンバーの「Close Your Eyes」を8分の6拍子で聴かせてくれました。ロベルトのドラムスと松岡のパーカッションが一体となって骨太のノリを生み出し、アリーチェは伝説のアメリカ人ジャズ・シンガー、カーメン・マクレイ風の節回しで魅了します。

「次の曲はクラシック・スピリチュアル・ゴスペル・サイケデリック・チューンだ」というニコラのMCの後に飛び出したのは、19世紀のアメリカで生まれたとされる伝承歌「Sometimes I Feel Like A Motherless Child」。エレクトリック・ベースに持ち替えたルカがファンキーなノリを生み出し、マグヌスのフルートとピエトロのキーボードがワイルドなソロを繰り広げます。鳴りやまぬ拍手の後に飛び出したのは、デューク・エリントン・オーケストラで有名な古典的ナンバー「Caravan」。時代、国境、スタイルを飛び越えて、今夜もニコラたちは"自分たちの信じるジャズ"を、われわれに届けてくれることでしょう。
(原田 2016 3.13）

Photo by Tsuneo Koga