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The EXP Series #05 / JACOB COLLIER presented by Quincy Jones Productions

artist JACOB COLLIER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


百聞は一見にしかず。

こんな古いことわざが、こんなに強い実感をもって響いてくるとは。驚異のワンマン・オーケストラ人間、ジェイコブ・コリア--の初来日公演が今、開催されています。

1994年、英国ロンドン生まれ。YouTubeにアップされた多重録音によるアカペラ・ヴォーカル+楽器演奏のパフォーマンスが数百万単位のビュー数を集め、ジェイミー・カラムやパット・メセニー等の大物ミュージシャンからも絶賛を受けています。今なおポピュラー音楽シーンのトップに君臨する首領クインシー・ジョーンズのお墨付きを得ただけでなく、いま最も勢いのあるグループのひとつといっても過言ではない"スナーキー・パピー"の『FAMILY DINNER VOLUME TWO』でも曲提供&パフォーマンスで異彩を放っています。待望のソロ・アルバムのリリースも近づいているようですが、それに先駆け、日本にいながらにしてジェイコブの若さと勢いにあふれたワンマン・ワールドを満喫できるとは、実にラッキーです。「何か新しくて面白い音楽はないか、エキサイティングなサウンドに出会う機会はないか」と、日々ハングリーに動き回っている音楽フリークに、なにはなくともお勧めのプログラムといえましょう。

ステージには左からドラムス、多数のパーカッション、5弦エレクトリック・ベース、2台のシンセサイザー、ハーモナイザー、アコースティック・ピアノ、エレクトリック・アップライト・ベースが並びます。それらを、ループを駆使した"リアルタイム多重録音"で聴かせるところからライヴは始まりました。オープニングはYouTubeで彼の名を一気に高めた「Don't You Worry 'Bout A Thing」。スティーヴィー・ワンダーの名曲ですが、ジェイコブはあっと驚くような和声やリズムを使い、彼以外の何物でもない世界にこの曲を染めていきます。ヘッドセットマイクをつけて歌いながら、各楽器の間を飛び回って演奏するジェイコブは反復横飛びの選手のようです。足元を見ると、靴をはいていません。より軽やかな動きができるよう、あえて靴下をはいただけでステージにあがったと思われます。

カーペンターズで有名な「Close To You」の後は、スナーキー・パピーに提供した「Don't You Know」の自作自演。ハーモナイザーを使った"ひとりコーラス"が炸裂します。ハーモナイザーは、「声を出しながら任意の鍵盤を押すと、その鍵盤に相当する音程で自分の声が再生される」装置といえばいいでしょうか。たとえばCのコードを押しながら声を出せば、キーボードの音ではなく自分の声で構成されたCのハーモニーがスピーカーなりアンプから再生されるのです。個人的には'70年代後半に話題を集めたヴォコーダーの超進化版という印象を受けました。

プログラム後半では、チャーリー・チャップリンの「Smile」やビル・ウィザースの「Lean On Me」を、アコースティック・ピアノの弾き語りで披露。一切テクノロジーを使わない"素の状態"でも、彼が恐るべき実力者であることを観客に強く印象づけました。サウンド・エンジニアを帯同して繰り広げられるこの初来日ステージ、のちのちまでの語り草になる予感がします。
(原田 2016 3.8)

Photo by Makoto Ebi

SET LIST

2016 3.7 MON.
1st
1. DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING
2. CLOSE TO YOU
3. DON'T YOU KNOW
4. IN MY ROOM
5. P.Y.T.
6. SMILE
7. FASCINATING RHYTHM
EC1. LEAN ON ME
EC2. DANNY BOY
 
2nd
1. DON'T YOU WORRY 'BOUT A THING
2. CLOSE TO YOU
3. DON'T YOU KNOW
4. IN MY ROOM
5. P.Y.T.
6. LATELY
7. FASCINATING RHYTHM
EC. DANNY BOY

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