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KURT ELLING

artist KENDRICK SCOTT , KURT ELLING

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


グレゴリー・ポーターやホセ・ジェイムズの活躍で脚光を浴びる男性ジャズ・ヴォーカル界。その真打が今、東京で熱唱を繰り広げています。1990年代から第一線で歌い続ける才人、カート・エリングの登場です。

幅広い声域、抜群の声量、巧みなマイク・コントロール、センスの良い選曲、イマジネーション豊かなスキャットと、彼の魅力をあげていくときりがありません。常にハイレベルなメンバーを引きつれて来日しているカートですが、今回のラインナップは以前にも増して華があります。マリア・シュナイダー・オーケストラの一員でもあるゲイリー・ヴァセイスがピアノとオルガンを弾き、自身のグループ"オラクル"でも注目を集める俊英ケンドリック・スコットがドラムスを担当します。ギターのジョン・マクリーンは約25年のキャリアを持つベテラン、ベースのクラーク・サマーズはチャーリー・ヘイデンとダレク・オーレスの教えを受けた気鋭です。

カートは例によって、カテゴリーを超えた新旧の名曲を歌いつづります。ジョー・ジャクソンのヒット・ナンバー「Steppin' Out」はワルツ・タイムと4ビートを混在させたアレンジを採用、長尺のスキャットを交えながらの歌唱は火の出るような熱気に満ちていました。かと思えば次はデューク・エリントンが1940年代に書いた「リベリア組曲」から「I Like The Sunrise」を歌唱。オリジナル・ヴァージョンではアル・ヒブラーが朗々と歌い上げていましたが、カートはより軽妙に、しかしメロディ・ラインの美しさを崩すことなく料理します。

カートのヴォイス・パーカッションとケンドリックのドラムスがバトルを演じた後は、ジャコ・パストリアスの「Three Views of a Secret」へ。数々のミュージシャンに愛好されてきたナンバーですが、まさかこれを歌詞つきでとりあげるとは。もともとヴォーカル・ナンバーではないためか、音の幅がとても広く、しかもワン・コーラスが長いのですが(何曲かのモチーフをつなげて1曲にしたという話も、ぼくはどこかできいたことがあります)、カートはヴォーカリストとしての全力量を注ぎ込むように、このメロディを歌い込みます。途中、ベースとのデュオをはさみながらの展開は文句なしの鳥肌もの。またひとつ、この曲の名演が生まれたといっていいでしょう。

プログラム後半では、カートの友人であるTOKUがフリューゲルホーンで参加。ファンク風にアレンジされた「April In Paris」で早速、バンドとの相性の良さを示します。続いてカートの最新作『Passion World』からの「Bonita Cuba」へ。キューバ出身の人気トランペット奏者、アルトゥーロ・サンドヴァルの書いたメロディにカートが歌詞をつけたバラードです。哀調を帯びたカートの歌声に、抑制のきいたTOKUの吹奏が見事に重なって、ライヴはまたしてもクライマックスを迎えました。

「ブルーノート東京は、ぼくらの日本におけるホームなんだ」と語るカート。本日も入魂のステージで、男性ジャズ・ヴォーカルの真髄を届けてくれることでしょう!
(原田 2016 3.2)

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