2016 1.22 fri., 1.23 sat., 1.24 sun.
JAMES CHANCE & THE CONTORTIONS
artist JAMES CHANCE
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
「Contort Yourself」が響き渡った瞬間、鳥肌が立ちました。いわゆるニューヨーク・ノー・ウェイヴの旗手にして、今なお尖り続けるカリスマ、ジェームス・チャンス&ザ・コントーションズの登場です。
パンク・ロックの歴史に名を刻むジェームスですが、いっぽうでジャズとの接点が多いことでも知られています。チェット・ベイカーに捧げたオムニバス・アルバム『Medium Cool』への参加を懐かしく思い出す方もいらっしゃるでしょうし、短期間ながらデヴィッド・マレイにサックスを習っていたこともあるようです。オープニングはサックスではなく、ピアノ演奏による「Love For Sale」。マイルス・デイヴィスやエラ・フィッツジェラルドなど数多くの伝説的ミュージシャンが演唱を残したコール・ポーターの楽曲です。譜面を見ながらピアノでフレーズを綴るジェームス、プランジャー・ミュートを用いたマック・ゴルホンのトランペットが絡みます。ぼくがマックのプレイを初めて見たのは、もう20年ほど昔、移転前のブルーノート東京で行なわれたレスター・ボウイ・ブラス・ファンタジーの公演でした。豊かな音量、ハイノートを駆使した吹奏は、今回も際立っていました。余談ですがレスター・ボウイの弟でトロンボーン奏者のジョー・ボウイは、ジェームスが第一次コント―ションズを解散した後に結成した"ジェームス・ホワイト&ザ・ブラックス"のメンバーだったことがあります。
スタンダード・ナンバー「Yesterdays」を歌ったあと、いよいよファンクとパンクとフリー・ジャズを攪拌した世界が幕を開けます。コント―ションズが30年の眠りから覚め、再び活動を始めたのは2010年のことですが、彼らがまさか「ブルーノート東京」のステージに立つとは。しかし今、目の前で、その"まさか"が行なわれているのです。「Design to Kill」、「Almost Black」、ギル・スコット・ヘロンの自作でエスター・フィリップス等もカヴァーした「Home Is Where The Hatred Is」などなど、惜しげもなくプレイされます。ピアノ、オルガン、サックスを使い分け、けいれんするようなステップを踏みながらシャウトするジェームスのかっこよさ。80年代に脚光を浴びたジャズ・バンド"マイクロスコピック・セプテット"の一員でもあった左利きのドラマー、リチャード・ドゥウォーキンのタイトな叩きっぷりも絶品でした。後半ではフランク・シナトラのヒット「That's Life」、敬愛してやまないジェームス・ブラウンの「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing」("一切のほどこしはいらない。欲しいものは自分でドアを開けて手に入れる"という歌)、とどめとばかりに「Contort Yourself」が飛び出しました。私事ですが、ぼくはこの曲を学生の頃、「サウンド・ストリート」というFM番組で聴いて一発で好きになりました。しかし当時、自分が住んでいた田舎では、こうした洋楽のレコードが簡単に手に入るような状況ではなく、上京してようやく『Off White』を購入、朝に晩に繰り返し聴いたことを思い出します。ふつうならここで「懐かしい」となるのですが、ぼくが受けた印象は逆でした。懐かしい気持ちを吹き飛ばすように新鮮で、熱いサウンドが展開されたのです。
ジェームス・チャンスは、まぎれもなく現在進行形です。80年代を体験していないリスナーにもどんどん来ていただいて、この鋭利でギラギラした世界を味わっていただけたらと思います。公演は24日まで続きます。
(原田 2016 1.23)
Photo by Tsuneo Koga
2016 1.22 FRI.
| 1st | |
|---|---|
| 1. | YESTERDAY |
| 2. | DESIGN TO KILL |
| 3. | ALMOST BLACK |
| 4. | HOME IS WHERE THE HATRED |
| 5. | DO THE SPLURGE |
| 6. | THAT'S LIFE |
| 7. | JADED |
| 8. | MELT YOURSELF DOWN |
| 9. | HELL ON EARTH |
| 10. | IT ALL DEPENDS ON THE AMOUNT |
| 11. | I DON'T WANT NOBODY TO GIVE ME NOTHING |
| 12. | KING HEROIN |
| 13. | CONTORT YOURSELF |
| 2nd | |
| 1. | DESIGN TO KILL |
| 2. | SAX MANIAC |
| 3. | HOME IS WHERE THE HATRED |
| 4. | DO THE SPLURGE |
| 5. | DISCO JADED |
| 6. | THE STREET WITH NO NAME |
| 7. | HELL ON EARTH |
| 8. | IT ALL DEPENDS ON THE AMOUNT |
| 9. | KING HEROIN |
| 10. | CONTORT YOURSELF |
| EC. | I CAN'T STAND MYSELF |







