原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

名門カウント・ベイシー・オーケストラが、記念すべき結成80年目をしめくくるライヴを開催中です。しかも今回は、久々のニュー・アルバム『A Very Swingin' Basie Christmas!』を携えての公演。ビッグ・バンド・ジャズの王道と、世界中で愛されているクリスマス・ソングの組み合わせは、"最強タッグ"といっていいでしょう。

クリスマス・ソング、通常のベイシー・ナンバーの披露、どちらもレパートリーは日替わりだそうです。コンダクターは昨年と同じく、トランペット奏者のスコッティ・バーンハート。彼の挨拶とメンバー全員の起立から、ライヴは始まりました。外はすっかり冬本番といった感じですが、名古屋ブルーノートでの公演や洗足学園でのクリニックを終えてきた彼らのサウンドはオープニング曲「Hey Jim」から熱気をまき散らします。「Corner Pocket」はベイシー楽団に約40年間、在籍したフレディ・グリーン（ギター）の自作曲。'５０年代の名盤『エイプリル・イン・パリ』ではサド・ジョーンズが、マンボの人気曲「セレソ・ローサ」のメロディを引用したアドリブで評判を呼びましたが、スコッティはそれを踏襲することなく自身のフレーズでソロを綴ります。僕は今から四半世紀ほど前、マーカス・ロバーツらとの共演で"ポスト・ウィントン・マルサリス"のひとりとして注目を集めていた頃の彼のプレイを思い出しました。ライヴを通じての主なソリストは、ほかにダグ・ミラー、ダグ・ローレンス（ともにテナー・サックス）、ジェイソン・マーシャル（バリトン・サックス）、ハイノート・ヒッターのマイケル・ウィリアムス（トランペット）、レジー・トーマス（ピアノ）、ウィル・マシューズ（ギター）等。個人的にはロイ・ハーグローヴのRHファクターでも活動するジェイソンの参加が大きな収穫でした。

クリスマス・アルバムからは「Silent Night」、「I'll Be Home For Christmas」、「Let It Snow」を聴かせてくれました。ベイシー楽団は、まだ創立者のカウント・ベイシーが健在だった頃に「Jingle Bells」のシングル盤を出したことがあります。しかしアルバムまるごとクリスマス・ナンバーで占めるのは今回が初めてなのだそうです。トランペット奏者のクリス・ジョンソンが編曲した「Let It Snow」は、明るい曲調とベイシー楽団流のスウィング感覚が相乗効果をあげた、この夜一番の目玉だったと思います。

公演は12日まで続きます。ひと足早いクリスマスを、極上のビッグ・バンド・サウンドと共にお楽しみください。
(原田 2015 12.9）