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KENDRICK SCOTT ORACLE

artist KENDRICK SCOTT

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


クリスチャン・スコット、狭間美帆、カマシ・ワシントンと、現在進行形ジャズの香ばしさを伝えるプログラムが続く「ブルーノート東京」。昨日からは俊英ドラマー、ケンドリック・スコット率いるオラクルが登場しています。

過去、ザ・クルセイダーズ、テレンス・ブランチャード等と共に「ブルーノート東京」に出演したことがあるケンドリックですが、自身のグループでここのバンドスタンドに立つのは今回が初めて。"オラクル"としては、2013年の「コットンクラブ」公演以来の来日です。超満員の店内にはケンドリックと同年代かさらに下と思われるオーディエンスの姿も目立ち、いかに幅広い年齢層が"オラクル"のライヴを楽しみにしていたかがわかります。

共演メンバーは2013年公演にも同行したテイラー・アイグスティ(ピアノ、キーボード)とマイク・モレーノ(ギター)、そして"オラクル"としては初来日となるウォルター・スミスIII(テナー・サックス)とジョシュア・クランブリー(ベース)です。ウォルターはケンドリックのソウル・ブラザーというべき存在で、テレンス・ブランチャードのバンドでも一緒に演奏しています。ぼくは二人の共演を十数年前、目黒「ブルース・アレイ・ジャパン」で見て(ギタリスト、西藤大信の里帰りツアーでした)、"なんて息の合ったコンビネーションなんだ!"と驚いたことを思い出します。今回の公演でも、相性の良さは憎いほどです。ジョン・コルトレーンが得意としたハーモニック奏法を多用しながら白熱していくウォルターのブロウとケンドリックのドラムスとの絡みは、ライヴの目玉のひとつであると断言していいでしょう。ベースのクランブリーはロサンゼルス出身で、ヴィクター・ベイリー(元ウェザー・リポート)にエレクトリック・ベースを、アル・マッキボン(セロニアス・モンクやディジー・ガレスピーと共演)にアコースティック・ベースを学びました。今回はアコースティックに専念していましたが、ブランチャードのバンドの同僚でもあるケンドリックとの連携は見事のひとことにつきます。

演目は先ごろリリースされた『ウィ・アー・ザ・ドラム』、前作『コンヴィクション』(どちらもロバート・グラスパー・エクスペリメントのデリック・ホッジがプロデュース)からのものが中心。「日本には何度も訪れているけれど、自分のバンドで演奏できるのは本当に特別な機会だ」というMCのあと、「Pendulum」、「Milton」、「Serenity」等、入魂の楽曲が演奏されます。太さや長さの違うスティックを使い分けながら、大胆さとキメ細かさを併せ持つドラム・プレイでアンサンブルを包み込むスコット。タムの表面をスティックのお尻のほうでこすってチョーキングのような効果を出していたのも目をひきました。すっかりトレードマークとなった"マルキオーネ・ギター"からカラフルなトーンを紡ぎ出すモレーノ(ラーゲ・ルンド、ジュリアン・ラージと並ぶ現代ジャズ・ギター界の英知だと思います)の存在感は、とくに「Milton」で際立っていました。

カヴァー曲はハービー・ハンコックの「I Have A Dream」、ジミー・ヒースの「Gingerbread Boy」、フライング・ロータスの「Never Catch Me」。以上のうちで、客席が最も沸いたのはフライング・ロータス曲です。最新CDにも収められていますが、目の前で聴くと当然ながら迫力倍増。テナー・サックスとベースがユニゾンでメロディを奏で、その後ろでキーボードがコードをつけ、さらにその上でギターが単音フレーズを繰り返し、さらに背後でドラムスが倍のテンポで鳴っている・・・という壮大なアレンジを難なくプレイする彼らは、まるで"5人組のオーケストラ"でした。

公演は本日まで行なわれます。そして14日からは『ウィ・アー・ザ・ドラム』にゲスト参加しているシンガー、リズ・ライトが自身のプロジェクトで来日します。どちらも必聴必見です!
(原田 2015 11.11)

SET LIST

2015 11.10 TUE.
1st
1. SYNCHRONY
2. TOO MUCH
3. TOUCHED BY AN ANGEL (FOR MAYA)
4. MANTRA
5. LOTUS
6. WE ARE THE DRUM
7. LIBERTY OR DEATH
8. CYCLING THROUGH REALITY
EC. SERENITY
 
2nd
1. PENDULUM
2. APOLLO
3. NEVER CATCH ME
4. MILTON
5. I HAVE A DREAM
6. SERENITY
7. BE WATER
EC1. GINGERBREAD BOY
EC2. CYCLING THROUGH REALITY

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