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AKIKO YANO TRIO featuring WILL LEE & CHRIS PARKER

artist WILL LEE , 矢野顕子

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

このメンバーのライヴを聴くのは本当に楽しみです。何が飛び出すかわからないからです。トリオが結成されてから、かなりの歳月が経っていると思いますが、その音に「慣れあい」はありません。全員の息が合い、互いのサウンドに実によく耳を傾けているのはいうまでもないことですが、なんというのでしょうか、まだまだ各ミュージシャンが他のふたりに「手の内」を全部みせていないような気がするのです。演奏家自身が「こんな面白い響きが生まれるなんて」と、驚き、楽しみながら、ライヴを進めているように感じられました。矢野顕子、ウィル・リー、クリス・パーカーの黄金トリオは今回も刺激的で、耳をひきつけずにはおかないひとときを届けてくれます。

子どもの声をサンプリングしたイントロから、オープニング曲「Children In The Summer」が始まります。音の立ち上がりを消してチェロのような音を出すウィルのベース、ブラシを用いたクリスのドラムスが快いスウィング感を生み出します。途中、チャーリー・パーカー風のビ・バップ・フレーズが飛び出し、さらに矢野の奔放なスキャットもフィーチャーされました。かと思えば次ではクリスのリズムが、ニューオリンズR&B風のリズムを打ち出します。'76年にリリースされた伝説のファースト・アルバム『JAPANESE GIRL』からの「クマ」(飼い犬に因んだ曲名らしいです)が、見事に歳月を超えて、2015年ヴァージョンとして蘇りました。「さあ、次は何か」と思ったら、こんどは'80年代の名曲「David」です。クリスは左手でスティックにマラカスをつけたもの、右手でブラシを持ち、さらにその後マレットを手にして、その先端ではなく棒のほうをシンバルの縁に押し当ててユニークな音を出します。

矢野、ウィル、クリスの3人は、「曲をいかにより良くしてゆくか」について、いつも意見を出しあっているそうです。そうした成果のひとつひとつが、往年の楽曲に新たな息吹を与えることにつながっているのでしょう。

9月にリリースされる新作『Welcome to Jupiter』からも「そりゃムリだ」、「あたまがわるい」をいち早く披露。かと思えば大好きなシンガー・ソングライターのひとりだというジョナサ・ブルックの「Time」をしっとりと英語で聴かせてくれました。「サビの部分で突然、中学1年程度の英語のフレーズを混ぜる日本語の歌」は世の中にけっこうあるような気がしますが、矢野顕子は、日本語ナンバーはわかりやすい日本語ではっきりと歌い、英語曲は明快なディクションで歌いこみます。決して両者を混在させません。そこにもぼくは、彼女の高いミュージシャンシップを感じます。ウィルやクリスのような世界トップのファースト・コールが心から楽しそうにプレイするのも、もっともです。

公演は23日まで続きます(21日は休演。TOKUの"ディア・ミスター・シナトラ"が行なわれます)。各セット、レパートリーは入れ替わることでしょう。必見必聴のトリオ・ミュージック、本日はどんな曲で心を揺さぶるのでしょうか。
(原田 2015 8.19)

Photo by Takuo Sato


●矢野顕子トリオ featuring ウィル・リー&クリス・パーカー
2015 8.29 sat. SAPPORO CITY JAZZ
North JAM Session @札幌芸術の森野外ステージ
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