原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

ブラジルが世界に誇るアンバサダー、ジョイス（・モレーノ）の季節が今年もやってきました。公演は明日8月1日まで「コットンクラブ」、8月3日と4日に「ブルーノート東京」で行なわれます。ぼくは7月30日のファースト・セットを聴きました。

共演メンバーは夫君のトゥチ・モレーノ（ドラムス）、渡辺貞夫との共演でも知られるエリオ・アルヴェス（ピアノ）、そしてロドルフォ・ストロエテール（エレクトリック・ベース）。全編を英語詞でまとめた最新作『クール』の発売直後ということもあり、アメリカ産のナンバーもたっぷり楽しませてくれました。

大ヒット映画「ウェスト・サイド・ストーリー」の挿入曲であるタイトル曲「Cool」で小粋にスウィングし、やはり映画「いそしぎ」からの「The Shadow Of Your Smile」は、めったに取り上げられないヴァース（導入部）からシットリと歌われました。ジョイスは、この曲の作者であるジョニー・マンデルとジョイスは親友ですので、じかにマンデルからヴァースを教わったのかもしれません。エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエットでも有名な「Let's Do It」は軽快なサンバ調にアレンジ。「母親が大ファンだったので、私も子供のころから彼女の歌に親しんでいました。そのペギー・リーの曲を歌います」という前置きから始まった「Fever」（原曲はR&Bシンガー、リトル・ウィリー・ジョン）は、ジョイス自らつまびくアコースティック・ギターとトゥチのハンド・ドラムが活躍します。ペギーはベースをフィーチャーして歌っていましたが、ジョイスのエキゾチックなアレンジはこの曲から新たな魅力を引き出していました。

「このあたりでホームランドに戻りましょう」というMCに続いては、アントニオ・カルロス・ジョビンの「Aguas De Marco」、「Desafinado」、バーデン・パウエルの「Canto De Yansan」等のブラジリアン・ナンバーが次々と登場します。トゥチのドラムスは余韻たっぷりの音色で歌声に寄り添い（2枚のシンバルを重なるように並べていました。上のシンバルを叩くと下のシンバルにもその振動が伝わります）、エリオは間奏部分で卓越したジャズ・プレイヤーぶりを発揮しました。

来日のたびにサムシング・ニューを与えてくれるジョイス。今年の公演も要チェックです！
(原田 2015 7.31）

photo by Y.Yoneda

●JOYCE MORENO "Cool"
- 30th Anniversary Celebration since the first visit to Japan -
2015 7.30 thu. - 8.1 sat.　コットンクラブ

2015 8.3 mon. - 8.4 tue.　ブルーノート東京