LIVE REPORTS

ARTIST ARCHIVES

MONTHLY ARCHIVE

VIDEO ARCHIVES


McCOY TYNER & JOE LOVANO

artist JOE LOVANO , McCOY TYNER

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ジャズ・ピアノ界のリヴィング・レジェンド、マッコイ・タイナー。現代テナー・サックス界のカリスマ、ジョー・ロヴァーノ。両者のスペシャル・セッションが、昨日から始まっています。マッコイはこのところ、レコーディングから遠ざかっており、ライヴ活動も縮小しているので、「最近、どうしているのだろう」と気になっていたファンも多いと思います。1960年代のジャズ・シーンに新風を吹き込んだ精鋭も、今年で77歳(喜寿)になります。

マッコイとロヴァーノは2006年に『Quartet』というアルバムを吹き込んでいます。オープニングの「Walk Spirit, Talk Spirit」、続く「Blues on the Corner」ともに、そこでも演奏されていたナンバーです。マッコイはスタンダード・ナンバー「I Should Care」をソロで弾き、人気曲「Fly With The Wind」へとつなげました。フランシスコ・メラの躍動的なドラム・プレイが、マッコイやロヴァーノのアドリブを煽ります。ぼくもオラシオ・エル・ネグロ・エルナンデス、ダフニス・プリエト、フリオ・バレト、ルドウィッグ・アフォンソなどキューバ出身のドラマーをいろいろ聴いてきましたが、4ビートでスウィングできる(いわゆるアメリカのモダン・ジャズの乗りをばっちり表現できる)という点でフランシスコは群を抜いている印象を受けました。3枚のシンバルの使い分け、レギュラー・グリップによる姿勢の美しさ、フィリー・ジョー・ジョーンズやルイス・ヘイズを思わせる左手のスティックをスネア・ドラムの上に立てて右手のスティックでそれを叩く手法など、彼は目と耳の両方にジャズ・ドラムの快感を伝えてくれます。

後半はロヴァーノ、ジェラルド・キャノン(ベース)、メラのトリオ演奏が続きます。ロヴァーノのトリオものといえばエルヴィン・ジョーンズも参加したアルバム『Trio Fascination』2部作がありました。しかしあれは1曲あたりの演奏時間が短めで、ロヴァーノも様々な楽器を持ち換えていました。「テナー・サックスを吹くロヴァーノの、1曲10分を超えるトリオ・パフォーマンス」をライヴで味わえるのは実に嬉しいものです。ソニー・ロリンズが吹き込んだ最も冒険的なトラックの一つである「East Broadway Run Down」をイントロ部分に用いて、なだれ込むように始まった「Fort Worth」が個人的にはこの日のベストでした。グロウル、フラジオなども平気で混ぜながら、幅広い音域を滑らかに吹ききるロヴァーノ。つい口ずさみたくなるようなフレーズの間に、抽象的でしかもかっこいいフレーズを巧みに混ぜて、ぐいぐいと聴く者を引き込んでいきます。タイトルの"フォート・ワース"は、先ごろ逝去したオーネット・コールマンの生まれ故郷にちなむものでしょうか。感動的なパフォーマンスでした。

ロヴァーノがブルーノート東京に登場するのは2008年以来、7年ぶりとのことです。「もう、7年も待たせないでほしい。すぐにでも戻ってきてほしい」、そう強く思います。ニューヨーク「ヴィレッジ・ヴァンガード」を満員御礼にする自身のグループ"アス・ファイヴ"や、『Soundprints』に収められたデイヴ・ダグラスとのコンビネーションを生で聴きたい日本のファンが数多くいることを、ぼくは祈ってやみません。王者の風格、たたずまいをぜひ、間近で感じてください!! 公演は26日まで続きます。
(原田 2015 7.24)

SET LIST

2015 7.23 THU.
1st
1. WALK SPIRIT, TALK SPIRIT
2. BLUES ON THE CORNER
3. I SHOULD CARE
4. AFRICAN VILLAGE
5. AISHA
6. BARBADOS
EC. IN A MELLOW TONE
 
2nd
1. WALK SPIRIT, TALK SPIRIT
2. BLUES ON THE CORNER
3. I SHOULD CARE
4. FLY WITH THE WIND
5. IT'S EASY TO REMEMBER
6. FORT WORTH
EC. IN A MELLOW TONE

INDEX