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CASSANDRA WILSON

artist CASSANDRA WILSON

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


カリスマ・シンガー、カサンドラ・ウィルソンのプレミアム公演が昨日からスタートしています。

今回のライヴは、日本先行発売されたばかりの最新アルバム『カミング・フォース・バイ・デイ』の世界をたっぷりお届けしようという内容です。これは、ことし生誕100年を迎える伝説的シンガー、ビリー・ホリデイゆかりのナンバーをカサンドラ流に解釈した大変な力作です。「私の本当に最初のアルバムは、日本のレコード会社の制作だったの。JAL(日本航空)とのタイアップだった。それから30年ぐらい経ったと思うけど、また今回、いち早く日本のオーディエンスに新作を届けることができてとても嬉しい」と前置きしながら、カサンドラはビリーが1930~40年代に録音した不滅の古典に2015年の息吹きを加えました。ちなみに前述のファースト・アルバムは『ニューヨーカー/イン・ア・センチメンタル・ムード』というタイトルで1985年にジェット・ストリームというところから発売されています。

いつもすごいメンバーを連れてくるカサンドラですが、今回はブライアン・ブレイド・フェロウシップ等の活動でも知られるジョン・カウハード(ピアノ、フェンダー・ローズ)、ブランドン・ロスの後任として加わったケヴィン・ブライト(ギター)のプレイが異彩を放っていました。とくにカナダ出身で、普段はロックやフォークをプレイしているというケヴィンは小型ボディの楽器を使い、ハーモニクス、トレモロ、スライド、ループ等を駆使した自由奔放なアプローチでカサンドラの歌に絡みます。ベースのロニー・プラキシコ、ヴァイオリンのチャールズ・バーンハム(個人的にはジェームズ・ブラッド・ウルマーとの共演が忘れられません)といった、カサンドラ・ファンにはすっかりおなじみの面々も充実と安定のサポートを聴かせてくれました。

あるインタビューでカサンドラは「10代の頃に初めてビリーのレコードを聴いてから、ずっと魅了されっぱなしだった」と語っています。しかしビリーの持ち歌を自分で解釈するにあたって、「トリビュートという美名を借りた原曲トレース」を断じてすることなく、独自の楽器編成をほどこし、コード進行やリズムを変え、新たにイントロをつけ、ワン&オンリーの歌唱で各曲の核に迫りました。「Don't Explain」、「Crazy He Calls Me」、「Good Morning Heartache」などなど、ぼくはビリーのファンでもあるので、「ああ、この曲がこんな風になるのか」という驚きや興奮を存分に味わいましたが、クラブを埋め尽くしたオーディエンスは誰もがカサンドラの歌に酔い、同時に今から60年近くも前に他界したビリー・ホリデイへの関心をさらに深めたのではないでしょうか。

ステージにはハーモニウム(足踏みオルガン)と、カサンドラが弾くためのギターも置かれていましたが、ぼくが見た初日はプレイされませんでした。今日はどんな不朽の名曲が、新鮮に生まれ変わるのでしょうか。
(原田 2015 3.18)

SET LIST

2015 3.17 TUE.
1st
1. THE WAY YOU LOOK TONIGHT
2. DON'T EXPLAIN
3. WHAT A LITTLE MOONLIGHT CAN DO
4. CRAZY HE CALLS ME
5. YOU GO TO MY HEAD
6. ALL OF ME
7. GOOD MORNING HEARTACHE
8. THESE FOOLISH THINGS
9. LAST SONG (FOR LESTER)
10. BILLIE'S BLUES
EC1. GOD BLESS THE CHILD
EC2. I'LL BE SEEING YOU

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