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MONTY ALEXANDER with Kingston Local Train

artist MONTY ALEXANDER

REPORT

「ジャマイカン・ジャズ」のイメージを一身に担っているマエストロ モンティ・アレキサンダーが、またもや来日してくれた。ジャズファンにとっては、MPSレーベルなどに残したピアノトリオの人気盤でご存知の方も多いだろう。それと同時に、レゲエ史上最高のリズムセクション スライ&ロビーとも度々共演し、ジャズとレゲエのスムースな融合を成功させている数少ないジャズメンである。また、スティールパンなどをも積極的に取り入れ、自身のルーツでもあるジャマイカ~カリビアンミュージックを掘り下げる活動もライフワーク的に継続している。

今回はキングストン・ローカル・トレインを率いての来日。近年の活動の中心になっているハーレム・キングストン・エクスプレスの発展系とも言えるバンドで、これが現在のモンティによるカリビアン・ジャズの最新系だ。

ホレス・アンディ、ルーツ・ラディックスなどの数多くのレゲエアルバムを支えてきた職人ギタリスト アンディー・バスフォードを始め、レゲエのグルーヴを熟知した精鋭たちが集う中で、このバンドの肝はパーカッションのロバート・トーマスJr。ウェザー・リポートやザウィヌル・シンジゲートなどで活躍したフュージョン屈指のパーカッショニストで、カリビアンのサウンドへも傾倒したジャコ・パストリアスのワード・オブ・マウスにも起用されたロバートの自在なリズムがキングストン・ローカル・トレインの志向を露にする。

このバンドのテーマは、汎カリビアンミュージックをジャズで繋ぐこと。レゲエ、スカ、カリプソ、メントだけでなく、キューバやプエルトリコまでをも視野に入れたカリブ海諸国のリズムが次々に現れるステージは、陽気で、煌びやかな最高のエンターテイメントだ。レゲエのリズムが、いつの間にかカリプソやサルサに切り替わり、気が付いたらまたレゲエに戻っている。ボブ・マーリーの「コンクリートジャングル」の中でもジャズと、レゲエとソウルフルなサルサが入り混じる。ロバート・トーマスJrのパーカッションが、触媒となって、様々なリズムが大きな流れの中で繋がっていくサウンドには、ゆったりした中にも、卓越した技術が凝縮されている。その中で、モンティは、肩でリズムをとりながら、どんなリズムも踊るように乗りこなしていく。やはりモンティはレゲエが絶品で、レゲエがいかに"間"を大事にすべき音楽であるかを、そのピアノと所作で見せてくれる。またPAに指示を出して、たっぷりディレイをかけてもらい、身体でリズムを取りながら奏でるモンティのメロディカ(ピアニカ)は、レゲエファンには、夢見心地の至上のサウンドだろう。

ラストはメロウに仕上げたマーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」に、ハリー・ベラフォンテ「バナナボート」のメロディーを忍ばせて。会場中が多彩なリズムと、ハピネスに包まれる公演は、29日まで。

text : 柳樂 光隆
1979年生まれ。ジャズ評論家。ジャズを解放する2000年以降のジャズガイドブック「Jazz The New Chapter〜ロバート・グラスパーから広がる現代ジャズの地平」を監修・執筆。

SET LIST

2014 4.27 SUN.
1st
1. MURDER SHE WROTE
2. THE HEATHEN
3. LOVE NOTES
4. THINK TWICE
5. RAGGAELATOR
6. FOREVER LOVIN' JAH
7. NEVER LET ME GO ~ WAITING IN VAIN
8. SLEAKY
9. SKA MENTO
EC. HIGHER GROUND
 
2nd
1. MURDER SHE WROTE
2. JUST WAIT
3. HURRICANE
4. CONCRETE JUNGLE
5. HOPE
6. STRAWBERRY HILL
7. COME TOGETHER ~ MARCUS GARVEY
8. KING TUBBY MEETS THE ROCKERS UPTOWN
9. RAGGAELATOR
10. THE HARDER THEY COME
EC. WAGWAN

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