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RICHARD GALLIANO, BIRÉLI LAGRÈNE, DIDIER LOCKWOOD

artist DIDIER LOCKWOOD , RICHARD GALLIANO

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


アストル・ピアソラからじきじきに後継者に指名されたアコーディオン/バンドネオンの魔術師、リシャール・ガリアーノ。無数に存在するジャンゴ・ラインハルト・フォロワー群とは桁の違う独創性とテクニックでギターの可能性に挑み続ける、ビレリ・ラグレーン。ステファン・グラッペリを敬愛する一方でプログレッシヴ・ロック・バンド"マグマ"での活動歴も持つヴァイオリンの野心家、ディディエ・ロックウッド。

よくぞ集まってくれました。ヨーロッパ・ミュージックの奥深さを伝える3人のマスター・ミュージシャンのライヴが、昨日から始まっています。彼らが日本で揃って演奏するのは、1997年8月「ブルーノート東京」旧店舗で行なわれたセッション以来、約16年ぶりとのこと。昔からのファンにとっては、本当に待った甲斐のあるアンコール公演といえましょう。そして当時を知らないファンにとっては、実に新鮮な組み合わせであったはずです。

実をいうと、ぼくも97年の公演は見ておりません。技術とセンスを、とんでもなく高いレベルで併せ持つ3者が何を、どのようにプレイするのか。わくわくしながらクラブに向かいました。バンドスタンドには向かって左からロックウッド、ラグレーン、ガリアーノが並びます。ガリアーノはボタン式アコーディオンとアコーディナ(口で吹くアコーディオン)を演奏し、ラグレーンはナイロン弦のアコースティック・ギターで通します。

ピアノも、ベースも、ドラムスもありません。しかし耳をすますと、しっかり力強いリズムが聴こえてきます。ひとりがソロをとっている間、他のメンバーが楽器や弦をさりげなく叩いたりつまんだりして、実に快いビートを生み出しているのです。とくにラグレーンのプレイには心底驚かされました。二本の腕、十本の指、一本のギターで、なぜメロディ、コード、ベース・ライン、リズムを一度に奏でられるのでしょう。ぼくは何度も目を凝らして彼の指先を見ましたが、最後まで謎は謎のままでした。「4歳からギターを弾き始め、13歳でレコード・デビュー」というとんでもない記録を持つラグレーンは、今なおギターの技を研ぎ澄ませているのです。

演目は3者がそれぞれ自信作を持ち寄る、といった感じでした。ガリアーノの初期のアルバムに入っていた「Spleen」が久々に聴けたのも嬉しかったですし、チャーリー・パーカーの「Confirmation」とアントニオ・カルロス・ジョビンの「Wave」にヨーロッパ風味を振りかけたかのようなラグレーン作「Place du Tertre」も絶品でした。僕が聴いたことのあるCDではサックスがメロディを吹いていましたが、ロックウッドのヴァイオリンによる解釈は、それを軽く超えていました。最高峰の芸術家が美しい旋律を演奏すると、こんなにも豊かで暖かい世界になるのか。じんわりとした感動に包まれました。

公演は本日まで行なわれます。名手たちの至芸を、ぜひお楽しみください。
(原田 2013 11.26)

SET LIST

2013 11.25 MON.
1st
1. FOU RIRE
2. PLACE DU TERTRE
3. LEGS
4. SOLO BIRÉLI: MOUVEMENTS
5. TIMOTHEE
6. SPLEEN
7. SOLO RICHARD: LA VALSE A MARGAUX~ARIA
8. SOLO DIDIER: GLOBE-TROTTER
9. SPAIN
10. MINOR SWING
 
2nd
1. FOU RIRE
2. PLACE DU TERTRE
3. LEGS
4. SOLO BIRÉLI: MOUVEMENTS
5. SPLEEN
6. SOLO RICHARD: LA VALSE A MARGAUX~ARIA
7. THE KID
8. SOLO DIDIER: GLOBE-TROTTER
9. SPAIN
10. MINOR SWING

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