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THE BUDDY RICH ALL-STAR ALUMNI BIG BAND

artist PETER ERSKINE

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ドラム・ファン必見必聴の公演が昨日からスタートしています。バディ・リッチ・オールスター・アルムナイ・ビッグ・バンドのライヴです。

バディ・リッチは「キング・オブ・ドラムス」または「ドラム・ゴッド」と呼ばれる、超ビッグ・スター。2歳の頃からステージに立ち、フランク・シナトラ、ナット・キング・コール、カウント・ベイシー、チャーリー・パーカー、セロニアス・モンクらと共演。1940年代以降は主に自身のバンドで活動し、'87年に亡くなるまでフィル・ウッズ、アーニー・ワッツ、ボビー・シュー、スティーヴ・マーカス、ボブ・ミンツァー、アンソニー・ジャクソン、エリック・ミヤシロなど多数の逸材を輩出しました。彼の死後に制作されたトリビュート・アルバム『バーニング・フォー・バディ』には、サイモン・フィリップス、スティーヴ・ガッド、デイヴ・ウェックル、スティーヴ・スミス、ニール・パート、マヌ・カッチェ、ビル・ブルフォードらスーパー・ドラマーが集まっていましたが、彼らは皆、バディに憧れて成長したのです。

そして今回の公演では、ピーター・アースキン、グレッグ・ポッター、そしてバディの孫にあたるニック・リッチがドラムスを担当。ワイルドでシャープなドラムスの音色、炸裂するトランペットのハイノート、豪快なサックス隊のソリ(全員で同じフレーズをハーモニーをつけて吹くこと)がビッグ・バンドの醍醐味を届けます。トニー・レヴィンはキング・クリムゾンやピーター・ガブリエル人脈で有名なベーシストですが、そのずっと前の'70年代初頭にはバディのところで演奏していました(『ザ・ロアー・オブ・74』というアルバムは必聴です)。

トランペットのチャック・フィンドリーはバディの'60年代を代表する名盤『ビッグ・スウィング・フェイス』にも参加した大ベテランです。

この日、最初にドラムの椅子に座ったのはグレッグ・ポッター。ジャズ、ロック、ポップス等、幅広い分野でひっぱりだこ、エミー賞の受賞歴もある名手です。少年時代にバディのプレイに大感激してドラムに熱中し、バディには「Nice hair,Kid」と声をかけられたとか。抜群のリズム、キレのいい音色、そしてショウマンシップに溢れた"見せる"ドラミングが興奮を運びます。途中、「The Beat Goes On」ではバディの愛娘、キャシー・ リッチが登場。『ビッグ・スウィング・フェイス』から約45年、往年のあどけない歌声は、円熟味を感じさせるアプローチへと変化していました。

続いてはピーター・アースキンが「Love For Sale」他、不滅のバディ・リッチ・クラシックスをプレイします。ピーターといえばウェザー・リポートやステップス・アヘッドでの活動でも知られていると思いますが、その前はメイナード・ファーガソンやスタン・ケントン楽団で演奏していた"ビッグ・バンド・ガイ"です。この日はステージ前方にドラム・セットが設置されていたこともあり、ピーターの技のこまやかさ、絶妙な手足の動きを手にとるように見ることができました。

再びキャシーがステージに登場します。「次に紹介するドラマーを、私は生まれたときから知っています。だって私の息子なのですから。紹介しましょう、バディ・リッチの孫、ニック・リッチ!」

たくましい体つきは、空手四段だったという祖父のDNAでしょうか。しかし演奏のアプローチは異なり、スティックの握り方も違います(バディはレギュラー・グリップ、ニックはマッチド・グリップ)。ぼくはバディに心底ほれこんでいるので、「いくら親族でもハンパな演奏を聞かせたら許さないぞ」という気持ちで聴いていたのですが、抜群でした。バスドラの踏み込み、ゴースト・ノート(文章で言うと句読点のような役割を示す)の美しさ、時折入るクラッシュ・シンバルの強烈な一打、どれも見事でした。

バディの代表的なレパートリーのひとつに、「Keep The Customer Satisfied」があります。「お客さんに満足を与え続ける」という意味でしょうか。そしてこれはバディの信条でもありました。そのスピリットは、このビッグ・バンドにも見事に受け継がれています。ドラム・ファン、ビッグ・バンド・ファンの皆さん、ぜひ公演にいらしてください!
(原田 2013 6.24)

SET LIST

2013 6.24 mon.

1st
1.DANCING MANDancing Man - Buddy Rich - The Man
2.GROOVIN HARD
3.NUTVILLE
4.KEEP THE CUSTOMER SATISFIEDKeep the Customer Satisfied - Keep the Customer Satisfied
5.BEAT GOES ONザ・ビート・ゴーズ・オン - Blue Note Trip 1: Saturday Night / Sunday Morning
6.MACHINEMachine - Big Swing Face
7.BASICALLY BLUESBasically Blues - Swingin' New Big Band
8.LOVE FOR SALELove for Sale - Big Swing Face
9.MERCY, MERCY, MERCYMercy, Mercy, Mercy - The Best of Buddy Rich: The Pacific Jazz Years
10.SLOW FUNK
11.BEULAL WITCH
12.WILLOWCRESTWillowcrest - Big Swing Face
 
2nd
1.DANCING MANDancing Man - Buddy Rich - The Man
2.NUTVILLE
3.KEEP THE CUSTOMER SATISFIEDKeep the Customer Satisfied - Keep the Customer Satisfied
4.BEAT GOES ONザ・ビート・ゴーズ・オン - Blue Note Trip 1: Saturday Night / Sunday Morning
5.MACHINEMachine - Big Swing Face
6.BASICALLY BLUESBasically Blues - Swingin' New Big Band
7.LOVE FOR SALELove for Sale - Big Swing Face
8.MERCY, MERCY, MERCYMercy, Mercy, Mercy - The Best of Buddy Rich: The Pacific Jazz Years
9.SLOW FUNK
10.BLAME IT ON MY YOUTH
11.BEULAL WITCH
12.WILLOWCRESTWillowcrest - Big Swing Face


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