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KEIKO LEE with special guest GERALD ALSTON of The Manhattans

artist KEIKO LEE

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


ニュー・アルバム『ケイコ・リー・シングス・スーパー・スタンダーズ2』が大好評のケイコ・リー。内外の実力派男性シンガー5人とのデュエットが収められていることも大きな話題を呼びました。

今回のステージはなんと、その中からマンハッタンズのリード・シンガー、ジェラルド・アルストンを迎えた文字通りのプレミアム・ショウ。「昔からジェラルドの歌が大好きだった。アルバムに参加していただけただけでも光栄なのに、まさか同じ舞台に立つなんて。歌手をやっててよかった!」と、喜びを隠せないケイコ・リーの姿が印象的でした。

野力奏一、岡沢章、渡嘉敷祐一で構成された黄金のリズム・セクション(ぼくが本格的にジャズ・フュージョンを聴き始めた80年代、野力は渡辺貞夫のバンドで、岡沢と渡嘉敷は鈴木宏昌のザ・プレイヤーズで注目を集める気鋭でした)をバックに、ケイコは1曲目「Route 66」から全力疾走します。まさにハイウェイをフルスロットルで駆け抜ける ようなヴォーカルです。

そして2曲目は、TV-CMでもおなじみ「We Will Rock You」。クイーンの、あのあまりにも有名なヒット曲を、よくもここまでファンキーに衣替えしたものです。野力の鮮烈なソロ、岡沢と渡嘉敷が生み出すうねり。このバンドは本当にボーッと聴き流せる箇所がひとつとしてありません。「楽器と対等に音楽をつくりあげることのできる数少ない歌手」と賞賛されることの多いケイコ・リーですが、彼女ほど「歌」と「伴奏」の境目を感じさせない音作りをするシンガーは本当に希少だと思います。

3曲目はマーヴィン・ゲイの「What's Going On?」。ケイコがピアノで弾き語った後、曲の途中からジェラルド・アルストンが登場します。マンハッタンズを彩ってきた、あの豊かな歌声がクラブいっぱいに響き渡ります。ぼくはこの曲、マーヴィンの解釈がワン&オンリーのベストだと思っていて、いろんなカヴァー・ヴァージョンを聴いてもあまりピンと来ませんでした。でもジェラルドの熱気、迫力、包容力はマーヴィンのオリジナル版に勝るとも劣らないものだった、と断言していいでしょう。

続いてマンハッタンズにグラミー賞をもたらした「Shining Star」、 ジェラルドの最新ソロ・アルバム『Sings Sam Cooke』(サム・クック作品集)からの「A Change Is Gonna Come」。後者はアフリカ系アメリカ人が映画を見に行ったり繁華街に行こうとしただけで、「おまえが来る場所じゃない。うろつくな」といわれた時代の歌です。「でもいつか変化のときはくる。ぼくにはそれがわかっているんだ」。オバマ大統領にも感銘を与えた歌詞を、ジェラルドはじっくりと歌いこみます。

続いては再びデュオのコーナー。ケイコとジェラルドは「Feel Like Makin' Love」をまるで恋人どうしのように仲むつまじく歌い、アンコールではスタイリスティックス(マンハッタンズのライバルですね)の、「You Make Me Feel Brand New」を見事なハーモニーで聴かせます。「You Make~」は『スーパー・スタンダーズ2』にも入っていましたが、当然ながら、ライヴ・ヴァージョンはCDの何倍も長く、熱いです。

ケイコのジェラルドに寄せる長年の敬意、そしてジェラルドのケイコに寄せる「このシンガー、ただものではないな」という強い認識。心から歌を愛するファンに、飛び切りのシンガーが特別なセッションを届けてくれました。
公演は本日も行なわれます。ぜひどうぞ!
(原田 2013 5.29)

SET LIST

2013 5.29 WED.
1st & 2nd
1. ROUTE 66
2. WE WILL ROCK YOU
3. WHAT'S GOING ON ?
4. SUMMERTIME
5. SHINING STAR
6. A CHANGE IS GONNA COME
7. FEEL LIKE MAKIN' LOVE
8. IF IT'S LOVE
9. 卒業写真
10. YOU MAKE ME FEEL BRAND NEW

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