オマールの世界に包まれた、魔法のような夜 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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オマールの世界に包まれた、魔法のような夜

オマールの世界に包まれた、魔法のような夜

傑作『Alma』で共演したオマール・ソーサ&パオロ・フレズに、
日本を代表するタップ・ダンサー熊谷和徳による夢の共演。
オマールのスピリチュアルなピアノの音色と
美しいトランペットの響き、
そしてタップの抜群のリズムに誰もが心奪われた。

 もはや恒例となったオマール・ソーサのブルーノート東京公演。近年は強靭なリズムセクションを従えたグループでの出演が多かったが、今夜はイタリアのトランペット奏者パオロ・フレズとのデュオ(二人は、2012年のアルバム『alma』で共演している)にタップの熊谷和徳が加わるという珍しい編成。オマールのピアノを堪能しようと、手元が良く見える席を選んだ。

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 ステージはピアノ低音部のロングトーンで幕を開けた。ゆっくりと開放的な音階が積み上げられ、その上をパオロの伸びやかなトランペットとフリューゲルホルンが漂うと、アフリカの自然を想起させるような世界が広がった。オマールは、随所にエレクトリックピアノやシンセサイザーを用いて立体的な音像を組み立てていく。様々な音色を混ぜ合わせ、その場に出現する響きを楽しんでいるようで、チャーミングな表情で「スミマセンeverybody!」と観客にも歌うことを求めるのだった。

 パオロがトランペットに指輪をあててリズムを刻む中、オマールは突如キューバンスタイルのピアノで場面をガラリと変えて見せたりもする。圧巻だったのは、ビートから大きくはみ出してグルーヴするピアノソロだ。アイコンタクト一つでどこへでも行けるデュオならではのプレイだろう。

 後半に登場した熊谷和徳のタップは、抜群のリズムセンスで皆を圧倒した。そしてその音は、風や草原を駆ける馬のようであった。会場全体がオマールの描き出す風景に大きく包まれた魔法のような夜だった。

photography = Takuo Sato
text = Takuma Nonaka

オマール・ソーサ & パオロ・フレス デュオ with special guest 熊谷和徳
2014.3.10 mon.
Omar Sosa(p,key), Paolo Fresu(tp), Kazunori Kumagai(tap)

SET LIST
1st
1.INTRO/2.MULATO/3.IYAWO/4.OLLU/5.ALTERATIVO SKETCHES/6.TORI DANZON/7.DOS CAMINOS/8.MUEVETE END
2nd
1.INTRO/2.MULATO/3.IYAWO/4.OLLU/5.ALTERATIVO SKETCHES/6.TORI DANZON/7.LIGHT IN THE SKY/8.DOS CAMINOS/9.MUEVETE END
野中太久磨(のなか・たくま)
音楽家。1996年、弟の哲士とともにultra livingとしてデビュー。2008年よりDoug Scharin率いるHiMに参加。近年は主にピアニスト、作曲家として活動中。

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