[インタビュー|MY INSTRUMENT]YANN TOMITA | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[インタビュー|MY INSTRUMENT]YANN TOMITA

[インタビュー|MY INSTRUMENT]YANN TOMITA

ヤン富田のモジュラー・シンセ

日本最初のプロ・スティールパン奏者であり
電子音楽の第一人者でもあるマエストロが用意した
"マインド・エクスパンダー・システム(意識の拡大装置)"

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 最近でこそブームなモジュラー・シンセだが、ヤン富田が導入したのはかなり前のこと。手前は1994年に購入したSERGEのシステムだ。「ロシアの作曲家アレキサンダー・チェレプニンの息子サージ・チェレプニンが設計したモデルで、バナナ・プラグ仕様だから1つのアウトから多くのモジュールに信号を送れる」と語るように、無数のケーブルでモジュール同士が接続されている。あまりに複雑なので何が行われているのか観客には分からなかったかもしれない。「分からないのは当たり前かな(笑)。主には変調のためで、SERGE自身の発振器だけでなく、僕が弾いたギターなど、マイク以外のすべての音を加工していた」

 SERGEで加工された音は、奥に置かれたBUCHLAのシステムへと送られる。ボブ・モーグと並ぶ斯界のパイオニアで、昨年逝去したドン・ブックラが設計した200eというモデルだ。「2006年に2万ドルほど出してオーダーしたんだけど、届いたら電源が入らない(笑)。"それはないよ~"って文句を書いたらブックラさんに絶交されて......というのも当時BUCHLAを買う人はバグは承知の上で、みんなで直しながらやっていこうっていうスタンスだったんだ。それでも息子のエズラが直し方を教えてくれたので何とか使えるようになった」

 そのBUCHLAの中で重要な役割を担っていたのが227eというクアドラフォニックのモジュール。いわばサラウンドのパンナーだ。「今回、客席の後ろにもスピーカーを置き、227eを操作して音像を渦のように縦にも横にも回転させたの。いつも自分の音楽室でそういうシステムを組んでいるんだけど、それをブルーノート東京で再現したかったんだよね」

 通常のライブでは聴くことのできないダイナミックな音像変化。本人がMCで繰り返していた「忘れられない体験」を、間違いなく多くの観客が実感したはずである。

instrument
エレガントな音色が特徴のダブルテナー・パン。オリジネイターであるバーティ・マーシャルの手による貴重な個体だ
instrument
緑の光の点滅による"意識ほぐし器"は2ndステージで出演者6人に対して放射されたが、一部の観客も巻き添えに......

photography = Takashi Yashima
interview & text = Susumu Kunisaki
cooperation = Rittor Music

ヤン富田 (やん・とみた)
70年代後期よりスティールパン奏者として多くの作品に参加。またプロデューサーとして日本最初のハウス 阿川恭子『Miss A』、日本の最初のヒップホップ いとうせいこう『MESS/AGE』を手掛ける。

國崎 晋(くにさき・すすむ)
横浜市出身。『サウンド&レコーディング・マガジン』編集長を20年務め、現在は同誌編集人。2010年からはPremium Studio Liveと題した録音・イベントを開始し、ハイレゾ専門レーベルも展開。

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