ダーティ・ループスのジョナ・ニルソンがブルーアイド・ソウルの新星になる瞬間 | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ダーティ・ループスのジョナ・ニルソンがブルーアイド・ソウルの新星になる瞬間

ダーティ・ループスのジョナ・ニルソンがブルーアイド・ソウルの新星になる瞬間

ソロで新たな一歩を踏み出す、あの非凡な才能との再会

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 ダーティ・ループスのジョナ・ニルソンがソロ・デビューすると知って、正直なところ、大きな驚きはなかった。というのも完璧主義を自認する彼らは、1stアルバム『ダーティ・ループス』(2014年)に続く新作のレコーディングにてこずって、作業を一旦中断。3人のメンバーがそれぞれ独自のプロジェクトに取り組んで気分転換をする旨をファンに報告したのは、昨年2月のことだ。思えば、彼らがスウェーデンのストックホルムにある王立音楽アカデミー在学中にバンドを結成してから、10年近くが経過。この間に、ジャズとロックとソウルとエレクトロを超絶スキルで束ねたプログレッシヴ・ポップで、世界の度肝を抜いたものだが、ノンストップでツアーを行なってきたことを思えば、そろそろ立ち止まって次の動きを見極めるというのも得策だろう。

 そんな中にあってヴォーカルとキーボードを担当するジョナは、1歳の時に両親が指揮する教会の聖歌隊で歌い始めて以来、全人生を音楽と共に歩んできた男だ。だから「僕にとって歌うことは、あれこれ考えたり努力する必要がないほど自然な行為」と話しており、他方で11歳の時からピアノのレッスンを受け、その守備範囲はクラシックや合唱音楽を出発点に、パット・メセニー・グループを始めとするジャズ、ソウル、ポップ......と幅広い。そして、アカデミーではジャズ・ピアノとプロダクションを専攻。10代の頃からセッション・プレイヤーやアレンジャーとして地元のポップ・アーティストたちとコラボレーションを行なって経験を積み、『ダーティ・ループス』のレコーディングではメイン・プロデューサーを務め、オーケストラのアレンジにも深く関わった。かつ、歌い手として途方もない声域と表現力を誇り、スターの華を備えたエンターテイナーでもある。

 そういう彼の二元性を、「右脳のクリエイティヴィティと左脳の音楽理論のパーフェクトな均衡を保っている」と評して絶賛するのは、かねてからダーティ・ループスのファンを公言していたクインシー・ジョーンズ御大。詳しい事情は不明だが、どうやらクインシーの全面的バックアップのもとに、ソロ・アルバムの制作を進めているらしい。ではそれはどんな内容になるのか?現時点では「R&Bとポップに接近する」と報じられているのみで、じつは目前に迫った日本公演が、事実上の世界最初のソロお披露目ライヴ。フルバンド編成で、ダーティ・ループスの曲やカヴァー曲を交えて、アルバムの収録予定曲を聴かせてくれるという。

 そう、ブルーアイド・ソウルの新星が誕生する瞬間に、我々は幸運にも居合わせることになるのだ。

 

ダーティ・ループス
『ダーティ・ループス』
(ユニバーサル ミュージック)

新谷洋子(しんたに・ひろこ)
女性ファッション雑誌の編集者を経て、音楽ライターに。海外アーティストを中心に、幅広いジャンルのミュージシャンの取材、アルバム解説の執筆、歌詞対訳などを手掛ける。

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