【COTTON CLUB】中嶋彰子 公演直前インタビュー | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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【COTTON CLUB】中嶋彰子 公演直前インタビュー

【COTTON CLUB】中嶋彰子 公演直前インタビュー

今年デビュー30周年を迎える国際的ソプラノ・ディーヴァ
豪華メンバーと送るテーマの異なる二夜連続公演

「ムードのある場所で歌っていると、魂が浮いたような感じになることがあります。歌っている自分を、別の自分が操っているような感覚といえばいいのでしょうか。ちょっと二重人格かなと思うほどです(笑)。そこにお客様の反応が加わって、マッチしたら時が止まったような気分になるんです。舞台人としてこれ以上の幸せはないですね」 オーストリア・ウィーンを拠点に世界的な活動を続けるソプラノ歌手の中嶋彰子は、"ライヴの快感"についてこう語った。

Interview & Text = Kazunori Harada

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 1990年の全豪オペラ・コンクール優勝を経て、99年よりウィーン・フォルクス・オーパーの専属歌手となり、日本人として初めてウィーン市立音楽芸術大学教授に就任。近年は一般財団法人群馬オペラアカデミー「農楽塾(のうらじゅく)」総監督として次世代の育成にも力を入れる彼女が、デビュー30周年を祝してコットンクラブに初登場、テーマの異なる二日連続公演を開催する。

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 9月18日に行なわれるのは、「AKIKO NAKAJIMA & FRIENDS "TOMAKI TRIO"」のステージ。中井智弥(二十五絃箏)、斉藤雅昭(ピアノ)とのTOMAKI TRIOによる久々のステージでは時代を超えた日本の名曲の数々を目前で繰り広げ、さらに歌舞伎俳優の中村壱太郎との初コラボレ―ションも実現する。

「中井智弥さんとは石川県で行なわれたガラ・コンサートで知り合いました。出番は別々だったのですが、彼の次に登場するソリストが私だったんです。あまりにもすごいお琴の演奏だったので夢中になって、舞台袖で自分の出番を忘れそうになるほど聴き入ったことを覚えています。ウィーンで初めて共演したときに、"この感じならピアノは斉藤雅昭さんだな"と思って、3人で音を合わせたら本当に素晴らしかった。TOMAKI TRIOには、日本列島の南から北まで移動して、その土地で歌われている歌や民謡をこの3人らしいアレンジで残したいという夢があるんです。実際はスケジュールの都合もあって、なかなか集まる機会もとれないのですが、今回は久しぶりの共演です。初日は〈愛燦燦〉のような楽曲も歌いますし、〈糸〉はピアノの弾き語りでお届けします」

 また、中村壱太郎を迎えた「滝の白糸」は、本公演のために千住明が書き下ろした特別編曲版で披露される。

「壱太郎さんは歌舞伎で『滝の白糸』を演じていらっしゃって、私は日本語の新作オペラ『滝の白糸』を演じました。そこで今回、歌舞伎版とオペラ版の『滝の白糸』が初共演することになりました」

「壱太郎さんとは、衣装や内容についてリモート会議をしているところです。また、コットンクラブ公演では二日間ともマイクを使って歌います。これも私にとっては大きなチャレンジです。マイクを使って歌う場合、高いと音が立たないので、オペラ版よりもキーを下げて歌います。千住さんが、この1日のために編曲してくださった〈滝の白糸〉をお届けできるのは本当に嬉しいですね」

Guest:中村壱太郎 (歌舞伎俳優) より

この度は中嶋彰子さんのデビュー30周年記念 『AKIKO NAKAJIMA & FRIENDS』に出演させていただきますこと、とても光栄に思っております。彰子さんとは、聖児セミョーノフさんを介してのご紹介、そして泉鏡花の「滝の白糸」を通じての作品の巡り合わせを以って今回の出演に至りました。映像ではございますが、彰子さんのオペラ「滝の白糸」を拝見させていただき、白糸の村越欣也への思い、千住明さんの美しい音楽に包まれての彰子さんの歌声と表現に感動いたしました。歌舞伎の舞台において白糸を演じました私といたしましては、今回の彰子さんとの共演は「滝の白糸」が繋いでくれた「何かの縁」だと思っております。コットンクラブの優美なアンティーク世界で2人の白糸が奏でるハーモニーをお楽しみいただけましたら幸いでございます。

 翌日、9月19日のステージは「AKIKO NAKAJIMA & FRIENDS "CABARET NIGHT"」と題し、キャバレー文化が華やかりし1920年代のパリ、ベルリン、ウィーン、さらに武満徹の映画音楽の世界へ観客を誘う。シャンソン歌手の聖児セミョーノフ、ヴァイオリンの常田俊太郎、アコーディオンの桑山哲也ら音楽家に加え、ダンサー、パフォーマーたちも登場。約100年前のキャバレーの空気を現代の東京に運ぶ。

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「2012年にシェーンベルクの『月に憑かれたピエロ』と能を融合させた楽曲〈夢幻能『月に憑かれたピエロ』〉を初演し、2016年に"東京・春・音楽祭"(春祭)で再演しました。この反応がとても良かったので、今度はシェーンベルクと同時代の、たとえば黄金時代のキャバレーを舞台にした物語に取り組もうと思い、2018年にオールナイト形式で初演しました。春祭は上野近辺で行なわれるのですが、この演目の会場は鶯谷の東京キネマ倶楽部でした」

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「これはお堅い春祭のなかでは大変異例なことでした。今回はそのプログラムを一層凝縮した形でお届けすることになります。私もカッチリとプロデュースして台本を書いているんですが、自分でも"濃すぎるほどの内容だな"だと思っています」

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 アメリカでは"ローリング・トゥエンティーズ""ジャズ・エイジ"と呼ばれた1920年代。映画に音声がつき、ルイ・アームストロングやデューク・エリントン(彼はハーレムの「コットンクラブ」を拠点とした)といった突拍子もないスタイリストが飛び出したのもまた、この時期である。

「決して美しいものではない、時にはグロテスクで残酷で退廃的でありながら、ものすごい勢いがあって、キャバレーやナイトクラブとかで、とんでもなくエキサイティングなことが起こっていた時代。ヨーロッパには"キャンドルライトを両方から燃やしていく"という表現があるんです。その言葉がぴったりの、激しく刹那的な時代が20年代だったと思います。世界各地で音楽家や美術家や文章家などいろんな才能の持ち主が頭角を現して、日本からも貴志康一さんのような才人音楽家がベルリンにやってきて。当時のキャバレーは朝まで大人たちが遊んだ社交の場です。クラシックのコンサートを聴き終えた観客が、その後キャバレーに足を運んで、朝までエンターテインメイトを満喫したんです」

 オペラやクラシックを"お勉強"や"カチコチになって聴く"という傾向から解放したい、ぜひオープン・マインドで楽しんでもらいたいと、話に熱がこもる。

「オペラ歌手の場合、30周年コンサートというと、たいがいは"お別れコンサート"みたいになってしまうんです。でも私の人生はこれからですし、取り組みたいことはいっぱいあります。オペラ界ではこれまで56演目のプリマドンナを演じてきましたが、今後はどんどんジャンルを超えて面白いことに取り組んでいきたいですね。その第一歩を、ぜひコットンクラブで楽しんでいただけたらと思います。二日間の公演ですが、どちらも異なる内容ですし、今の自分だからこそできるステージをお届けします」

Guest:聖児セミョーノフ (vo) より

ヨーロッパを拠点に数々の名門劇場で主役を演じ歌われてきた日本が世界に誇る本物のオペラ・ディーヴァ中嶋彰子さんのデビュー30周年を記念する特別なライヴに出演させていただけることを心より光栄に思っています。僕はフランスのシャンソンの名曲や自らのルーツでもあるロシアで生まれ革命勃発とともに国を渡り1920年代のパリで流行したキャバレーソングなどを歌います。なんと中嶋彰子さんとのデュエットもお届けする予定です。キャバレーをテーマに以前、中嶋彰子さんとご一緒した「東京・春・音楽祭」での公演は早々に満席札止めとなり、ご覧いただけなかった方々もたくさんいらしたと聞き及んでおります。東京の大人の社交場であるコットンクラブで繰り広げられる今回のキャバレー・ナイトも、とてもゴージャスで濃いライヴショーになること間違いなしです。是非お聴き逃しなきようお願いします!みなさんと会場でお逢いできることを楽しみにしております!!

Guest:常田俊太郎 (vln) より

この度、中嶋彰子さんのデビュー30周年を記念した素敵なコンサートに参加できますこと、大変嬉しく思っております。また、様々なバックグラウンドを持つ素晴らしい演奏者の方々による、パリのキャバレー・カルチャーを軸とした意欲的なコラボレーション・ステージにお邪魔できますこと、大変楽しみにしております。この、コットンクラブという場にも素晴らしくマッチしたライヴになること間違いなしと思いますので、ぜひ、会場でお楽しみいただけますと幸いです!

Guest:桑山哲也 (acc) より

コットンクラブは2015年に発売した僕自身の9枚目のアルバム『シトロン』の発売記念ライヴを行なった会場であり、大変思い出深い会場でもあります。ゴージャスでエレガントなインテリアが醸し出す気品ある雰囲気はアコーディオンというヨーロッパ発祥の楽器を弾く自分にとって、パリのシアターで演奏しているかのような居心地の良い気分になる素晴らしい会場です。ジャンルを問わず、様々なアーティストとコラボレーションし、日本のシャンソン界を牽引する聖児セミョーノフ氏から今回の公演にお誘い頂きました。普段、シャンソンやポップスのコラボが多いため、クラシックの声楽家の方と共演する機会が少ない僕にとって、世界的なソプラノ・ディーヴァであり、ご活躍なさっている中嶋彰子さんと共演させて頂ける事は大変光栄な事です。ジャンルを超越したミュージシャン、パフォーマーの皆さんとの音楽的化学反応によって、東京の中心、丸の内・コットンクラブがどのような1920年代のパリのキャバレー・ナイトショ ーになるのか僕自身も大変楽しみです。

LIVE INFORMATION

【コットンクラブ】
AKIKO NAKAJIMA & FRIENDS
"TOMAKI TRIO"

中嶋彰子 & フレンズ

2021. 9.18.sat
[1st.show] open 3:00pm / start 4:00pm
[2nd.show] open 5:45pm / start 6:30pm

<Member>
中嶋彰子 (vo)
中井智弥 (二十五絃箏)
斉藤雅昭 (p)

【ゲスト】
中村壱太郎 (歌舞伎俳優)

公演詳細はこちら→ http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/akiko-nakajima-210918/

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【コットンクラブ】
AKIKO NAKAJIMA & FRIENDS
"CABARET NIGHT"

中嶋彰子 & フレンズ

2021. 9.19.sun
[1st.show] open 3:00pm / start 4:00pm
[2nd.show] open 5:45pm / start 6:30pm

<Member>
中嶋彰子 (vo)
辰巳真理恵 (vo)
斉藤雅昭 (p)
山本裕之 (b)
相川瞳 (per)
NaHeek (performer)
レイチェル・ダムール (performer)
ミス・キャバレッタ (performer)
アクアドルチェ (performer)
橋岡未浪 (performer)

【ゲスト】
聖児セミョーノフ (vo)
常田俊太郎 (vln)
桑山哲也 (acc)

公演詳細はこちら→ http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/akiko-nakajima-210919/

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