ベッカ・スティーヴンスの冒険は続く | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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ベッカ・スティーヴンスの冒険は続く

ベッカ・スティーヴンスの冒険は続く

※ベッカ・スティーヴンス公演は、アーティスト側と協議のうえ、公演を延期することとなりました。本公演を楽しみにされていました皆さまには、深くお詫び申し上げます。

変化を恐れない才能が
ステージで美しく、力強く咲き誇る

 べッカ・スティーヴンスがブルーノート東京に初登場を飾る。 作品ごとに進化を続ける彼女は、最新作『ワンダーブルーム』で驚くほどダンサブルに変貌。人々を歓喜に導く音楽のパワーを糧に、ベッカの新たな世界がまもなく開花する。

Photography = Shervin Lainez
text = Kentaro Takahashi

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 2011年のアルバム『Weightless』で初めて知ったベッカ・スティーヴンスの音楽は、アコースティックな弦楽器やコーラス・ハーモニーへのこだわりを感じさせるナチュラルでオーガニックなものだった。ノースカロライナ州出身で、アパラチア山脈周辺に伝わるフォーク・ミュージックに親しんで育った、というバックグラウンドを知って、なるほどと頷いたものだった。

 ブルックリンを拠点に活動する彼女は、当地のジャズ・サークルで注目されるようになり、様々なアーティストと共演も重ねた。グレッチェン・パーラト、レベッカ・マーティンとともにコーラス・グループのティレリーを結成。2015年のスナーキー・パピーとの共演をきっかけに、デヴィッド・クロスビーのライトハウス・バンドに参加して、クロスビーの復活にも大きな貢献をする。こうしたコラボレーションは、彼女がシンガー・ソングライターであるにとどまらず、ギタリストであり、アレンジャーであり、サウンド・アーティストであるという印象を深めるものだった。

 とはいえ、2017年の『レジーナ』を受け取った時には驚いた。エレクトリック・ギターを手にした彼女は、イギリスに赴き、精密で重厚なロック・アルバムを作り上げていた。それまでの彼女に与えられていたフォーク、アコースティック、繊細、透明といった言葉に背を向けるかのように。強さや妖艶さを志向するベッカのインスピレーションはエリザベス女王からクイーンのフレディ・マーキュリーに至るまで、思いも寄らない時空を巡るものになっていた。

 そんな『レジーナ』から3年近くが過ぎ、もう何が来ても驚かないぞ、と思っていた2020年の初め、来日直前に届いた『ワンダーブルーム』と題された最新作に僕は再び驚き、ひれ伏している。スナーキー・パピーのエンジニアでもあるニック・ハードをプロデューサーに迎えているが、今回の大変化も間違いなく、ベッカ自身が選び取ったものだろう。みずからビートをプログラミングしたダンサブルなサウンド。ヴルフペックの超絶ファンク・ギタリスト、コリー・ウォンとともにプリンスやトーキング・ヘッズを思わせる曲に進んだりもしている。

 ジェイコブ・コリアー、マイケル・リーグ、デヴィッド・クロスビーなど、前作と共通するゲストも多いが、ベッカの強靭な意志が彼らを新しい渦に巻き込んでいくような感触がある。アルバム・タイトルは数年に一度、二日間しか咲かない巨大植物、タイタン・アルム(ショクダイオオコンニャク)の開花をイメージしたものだそう。人々を歓喜に導く音楽のパワーを彼女はそこに重ね合わせたのではないだろうか。

 冒険に次ぐ冒険。そのまっただなかにいるベッカ・スティーヴンスの再来日を僕はどきどきしながら待ち受けている。




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『ワンダーブルーム』
(コアポート)
※ 2020.3.4 発売


高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
1956年生まれ。音楽評論家、音楽プロデューサー、レコーディング・エンジニア、インディー・レーベル「MEMORY LAB」主宰。著書に『ヘッドフォン・ガール』『スタジオの音が聴こえる』など。

BECCA STEVENS
ベッカ・スティーヴンス

★ブルーノート東京公演★
2020 3.9 mon., 3.10 tue.

[1st]Open5:30pm Start6:30pm [2nd]Open8:15pm Start9:00pm
公演詳細はこちら → https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/becca-stevens/

★モーション・ブルー・ヨコハマ公演★
※BECCA STEVENS SOLO
2020 3.7 sat.

[1st]Open3:00pm Start4:15pm [2nd]Open6:00pm Start7:15pm
公演詳細はこちら → http://www.motionblue.co.jp/artists/becca-stevens/

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