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ジャズ、映画音楽、オーケストラなどのフィールドで縦横無尽に活動する鬼才・菊地成孔が、ダブ・セクステットを率いて登場を果たす。同ユニットは2007年に『THE REVOLUTION WILL NOT BE COMPUTERIZED』でアルバム・デビュー、続いて『Dub Orbits』、『In Tokyo』を発表。アコースティック・ジャズと電子音をミックスした大胆にして果敢な音作りでシーンを震撼させた。2000年代の活動全集的なUSBメモリー作品『闘争のエチカ“L' ethique de la lutte”(上/下)』の発表、デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの新メンバーによる活動再開など、常に話題を巻き起こしている菊地成孔。音楽家・文筆家として時代をリードする彼の“ジャズ”を至近距離で体感したい。
NARUYOSHI KIKUCHI DUB SEXTET
菊地成孔ダブ・セクステット
2010 11.29mon.
[1st] Open5:30p.m. Start7:00p.m.
[2nd] Open8:45p.m. Start9:30p.m.
Naruyoshi Kikuchi(sax)
菊地 成孔(サックス)
Shinpei Ruike(tp)
類家 心平(トランペット)
Masayasu Tzboguchi(p,kaoss pad)
坪口 昌恭(ピアノ、カオス・パッド)
Masato Suzuki(b)
鈴木 正人(ベース)
Tamaya Honda(ds)
本田 珠也(ドラムス)
Pardon Kimura(real time dub effects)
パードン木村(real time dub effects)
¥6,300(税込)
ツィタ王国ジャズ県の皆様。ワタシのバンド「ダブセクステット」が、来る11月29日に、ジャズの歌舞伎座ブルーノート東京に初登場します。
これまで様々なシュチュエーションでクール&モーダルに、そしてエキサイティングに演奏して来た我々ですが、今回ばかりは武者震いが隠しきれません。ブルーノートさんに世辞を言う訳ではなく、ワタシの作ったバンドの中で、ダブセクステットが最も<ブルーノート東京志向>なブツだからです。そのことは、当日お越し頂き、着席し、食事と酒をお楽しみ頂いた後、我々の最初の1音を聴いた瞬間に、深くご諒解頂けるでしょう。北東アジア情勢の緊張という状況さえも、我々に味方するでしょう。
普段ワタシのバンドなどは聴く筈もない、或は、一度キクチという奴のライブに行ってみたいのだがクラブやフェスや地方はちょっと。といった、オトナなうるさ型ジャズマニアの皆様にも、逆に、ブルーノート東京という空間に足を踏み入れるのは初めて。という皆様にも、ともにフレッシュな、そしてクール&モーダルな経験をして頂けると確信しております。両セットとも、まだ残席ございます故、当日ふらりという、粋な振る舞いでお会いする事も可能です。それでは失礼、そしてお楽しみに。
――最初にブルーノート東京に出演されたのは'03年ですね。
「そうです。雑誌主催の企画イヴェントでUAさんと共演しました。UAとはその後もコラボレーションが続いて、06年には共作のアルバム『CURE JAZZ』を発表しましたけど、その流れが始まったのはこのブルーノート公演ですね」
――その後、'04年に菊地さんはジャズ回帰を宣言し、ポストモダン・ジャズを標榜したソロ処女作『Degustation a Jazz』を発表されます。同作のリリース記念公演もブルーノートでしたね('04年)。
「『Degustation a Jazz』は、試食(=デギュスタシオン)みたいに、トラックを一口程度の時間サイズに分けて、それが41皿(41曲)出てくるというフルコース。全てが同時には演奏していないトラックをコンピューター編集しています。モダン・ジャズの持っている時間意識を相対化するという意味で、ポストモダン・ジャズというコンセプトを僕なりに明確に実現した作品です」
――同作は、ラテン、ボサノヴァ、ヒップホップとさまざまな音楽的要素を取り込んでいるけど、ジャズという点だけで全体が強力に一貫している印象がありました。
「僕の中には、挑発的な部分と、伝統を重んじる部分がずっと共存してきた。今回出演するダブ・セクステットがターゲットにしているのは、いまだに最も謎の多い音楽であり続ける'62〜8年のマイルス・デイヴィスのラスト・アコースティック期である、第二期黄金クインテットの音楽です。そこにダブ・エンジニアを擁し、リアルタイム・ダブ・ミックスするというのが一番解りやすい挑発性ですが、演奏それ自体も、単なるマイルスコピー的なものではなく、エッセンスを抽出した上で、リズム的な実験を加える等しています。でも、マイルスの後継を自認しているなんていうことはありません。自分にとって特別なジャズを、ジャズがアコースティック/エレクトリックのあいだで葛藤して何十年経った現在にやると、こういうかたちになったということです」
――挑発的な部分というと、ゼロ年代を通して、菊地さんは音楽のみならず、ファッション、映画、クラブカルチャーをはじめ、さまざまな分野にアクセスを持たれていました。その全方向的な活躍自体が刺激的で、菊地さんの魅力のひとつになっていると思います。
「それは、ジャズが触媒だからですよ。いま挙がったジャンルの中で、ジャズと接触を持っていないジャンルはないでしょ? たとえば、ダブ・セクステットのメンバーが着ているスーツは、クール・ストラティンというブランドが提供してくれている。ジャズをテーマにしたスーツ・ブランドで、今年の春夏は、それこそマイルスをイメージしたラインを展開していたりするんですが、そことコラボしています。ジャズとファッションの関係が切れたことなんて、これまで一度もないんです。
二段構えの奥深さですね。どんなに高尚なものでも、多くはナスティな出自を持っています。歌舞伎もジャズも、最初はかなりエロティックでパンキッシュで、キッチュなものだった。ジャズは、レストランのBGMやダンスホールのハウスバンドなどから出発して、たった数十年で現代芸術にまで育った。僕は、その幅に痺れるんですよ。単なる娯楽でも、単なる芸術でもない。熱心なファンも来てくれるし、ふらりと来る客もいるし、目利きのマニアもいる。そこにはワインがあって、料理があって、BGMじゃない音楽が演奏される。そもそも、食事と演奏が同時に提供されるなんて、よく考えれば、引き裂かれるようなことです。それが伝統的であり、斬新であり続けている。もうそれだけで痺れるんです僕は」
――ダブ・セクステットはもうすぐ結成4年目ですが、これまでさまざまな場所でライヴをされてきたと思います。今回ブルーノート東京で演奏されるにあたり、特別な意気込みはありますか?
「僕がこれまでにやったバンドの中でも、ダブ・セクステットは最も多種多様な場所でライヴをしてきたバンドです。クラブ、クラシックホールはもちろん、野外ロックフェスにも出演している。ブルーノートは特別ですよ。ジャズ本流の目利きが、ブルーノートというお店に客としてついてますからね。やっぱ歌舞伎座でしょう。
ふらりと遊びにきた客が楽しむ。ジャズは、そのくらいまでになるのが粋だと思う。僕のライヴには、老若男女、さまざまな人が集まってくれるけど、今回は、その中に“ブルーノートだから遊びにきた”という目利きの方々がいらしてくれたらうれしいですね。今まで、僕の名前だけは知っていたり、CDはいくつか持っているけど、ライブは見た事はない。といったジャズうるさ型の大人のお客様に来て頂けたら最高です」
http://www.kikuchinaruyoshi.com/
菊地成孔(Sax)を中心に気鋭の新人である類家心平(Trumpet)、坪口昌恭( Piano)、鈴木正人(Bass)、本田珠也(Drums)、パードン木村(Dub Engineer)という、2管にリズムセクション、ダブのエッセンスを入れる異色のジャズ・セクステットとして2007年結成。60年代のマイルス・デイビスクインテット(E.S.P/Miles Smiles / Sorcerer / Neferttiti)というオーセンティックなジャズをマトリックスに、オーネット・コールマン、ドルフィーのジャズを引用、アブストラクトかつファンキーに、スタイリッシュに奏でる。2007年12月『The revolution will not be computerrized』を発表。菊地成孔の新バンドとしてジャズ界のみならず、日本音楽界の注目を集める。2008年7月には、早くもセカンドアルバム『Dub Orbits』を発表するなど次々と作品を発表し、チャートを賑わせる。結成以来、ジャズの枠組みを飛び越え、フジロックフェスティバル、ライジングサンフェスティバル、アラバキロックフェスティバルなどの数々の音楽フェスティバルに参加。また、2008年、2009年と2年連続でBunkamuraオーチャードホールでの公演を成功させる。エッジの効いたストイックなパフォーマンスで異彩を放っている。