「スティーヴ・ガッドに初めて会ったのは2005年のことです。アメリカで行なわれた打楽器のコンベンションのホール・オブ・フェイム（名声の殿堂）部門に彼が招かれていて、私はマリンバ部門に出ていました。そのパーティで、ネクサス（注1）のビル・カーンがスティーヴを私に紹介してくれました。ビルとスティーヴはイーストマン音楽院の同級生なんです。
その少し前、リチャード・ストルツマン（注2）の紹介でエディ・ゴメスとも知り合いました。私はよくエディに“スティーヴと共演したい”と言っていたのですが、エディはそれを実現させるためにすごく骨を折ってくれました。『ミカリンバ』のプロデュースをスティーヴがしてくれることになったのも、エディが説得してくれたおかげです」
3歳でクラシック・ピアノを習い、10歳からドラムスの演奏も開始。カシオペア等のフュージョン・ミュージックに熱中し、やがてガッドに魅了された。少女時代の吉田ミカにとって、ガッドは「神様そのもの」だったという。その「神様」と同じステージに立つのは、どんな気持ちなのだろう。
「最初に一緒に演奏したときは気絶するぐらい感動しました(笑)。本当に気持ちいいです。スティーヴはドラムを叩きながら、私の音を100％聴いてくれている。私の心のうちまで読んで、演奏しているんだと思います」
スティーヴとは“ジョギング仲間”でもある。

「どんなに疲れていても、彼のジョギングにはつきあいます。途中、いろいろしゃべってくれるんですが、一言一言に人生経験がこもっているんです。スティーヴがよくいうのは「エゴがあったら音楽はダメ」ということ。ひとりよがりな演奏をしては、決してオーディエンスには伝わらない。バンドとしてのサウンドに、メンバー全員がフォーカスして、アンサンブルをつくりあげることが大切なんです。スティーヴやエディはアンサンブルの達人です」
2009年のツアーを収めたDVD『MIKA MARIMBA MADNESS』がNAXOS・DVDジャズ・チャートの首位に輝き、この1月にはN.Y.の名門、カーネギー・ホールで公演を開催したミカリンバ。ブルーノート東京には、満を持しての登場となる。
「世界を代表するジャズ・クラブに出演することができて、とても嬉しいです。私がブルーノートで演奏するのは初めてですが、スティーヴやエディはここがホームグラウンドのような人たち。彼らがしっかりと支えてくれるので、私は気負わず自然体で演奏したいと思っています。私はクラブで演奏するのが好きです。オーディエンスが近くにいて、反応がじかに感じられますから。絶対にいいライヴにしますので、ぜひ皆さん聴きに来てください。そしてマリンバの魅力に触れてください！」

注1　カナダのパーカッション・グループ。吉田ミカはトロント大学で彼らに師事した
注2　アメリカのクラリネット奏者。クラシック、現代音楽、ジャズに精通する