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Blue Note Tokyo 30th Anniversary presents / MICHEL LEGRAND TRIO

artist MICHEL LEGRAND

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


生誕80年、初来日から40年というアニバーサリー・イヤーに行なわれた来日公演(ブルーノート東京、すみだトリフォニーホール)から、早6年。フランスが世界に誇るマエストロが再び、最高に贅沢な"自作自演のひととき"を超満員のオーディエンスに届けています。巨星ミシェル・ルグランの公演が、昨日から始まりました。

「シェルブールの雨傘」、「おもいでの夏」など数々の名曲を生んだ映画作曲家として不滅の評価を得るルグランですが、超のつく筋金入りのジャズ好きでもあります。マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、サラ・ヴォーン、ビル・エヴァンス、オスカー・ピーターソンらとコラボレーションを行ない、レイ・ブラウン(ベース)やシェリー・マン(ドラムス)と組んだ'68年のアメリカ録音『ライヴ・アット・シェリーズ・マン・ホール』はジャズ・ピアノの名盤のひとつとして再発が繰り返されています。この日、オープニングに演奏された「Ray Blues」は、まさにそのアルバムを彷彿とさせるドライヴ感に満ちたものでした。

つづいてはルグランならではの抒情が光る、マイナー調のバラードが続きます。"リラのワルツ"の別名を持つ「Once Upon a Summertime」ではピアノと共にスキャットも聴かせ、「You Must Believe in Spring」ではジェフ・ガスコインのベースを大きくフィーチャー。英国出身の彼はボブ・ドローやジェイミー・カラム等のバンドでも活動経験のある、実に堅実な名手です。ジェフのメロディアスなソロを、鍵盤の低音域を使ったウォーキング・ベース奏法で盛り上げるルグランがまた、見事でした。「What Are You Doing the Rest of Your Life ?」はリリシズムの極致ともいえるプレイ。観客は静まり返り、一音も聴き逃すまいと演奏に集中します。

中盤では映画『Dingo』からのナンバーが紹介されました。この作品には最晩年のマイルスが"伝説のトランぺッター役"として登場し、演技をしています。そしてサウンドトラックはルグランとマイルスが全面的に組んで制作されました。ルグランはマイルスの思い出を語ったあと、「Dingo Lament」「Dingo Rock」をプレイ。後者ではドラマーのセバスティアン・デ・クロムが妙技を味わわせてくれます。セバスティアンとジェフはジェイミー・カラムのほか、グレアム・ハーヴィー(ステイシー・ケントと来日経験あり)の許でも一緒に演奏してきました。

後半では前回来日時にも大盛り上がりとなった、オスカー・ピーターソン、アート・テイタム、ジョージ・シアリング、エロール・ガーナー、デイヴ・ブルーベック、デューク・エリントン等の物まねを含む「Watch What Happens」を披露。オーラスは「シェルブールの雨傘(I Will Wait for You)」。このあまりにも有名なメロディを、作曲者自身の演奏で、しかも至近距離で聴ける喜びを、会場にいた全オーディエンスは味わったことでしょう。

公演は9日まで続きます。全ステージが伝説になる、そんな予感がします。
(原田 2018 7.7)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2018 7.6 FRI.
1st & 2nd
1. RAY BLUES
2. ONCE UPON A SUMMERTIME
3. YOU MUST BELIEVE IN SPRING
4. WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE
5. FAMILY FUGUE
6. DINGO LAMENT
7. DINGO ROCK
8. LES PIANISTES DE JAZZ
9. LES PARAPLUIES DE CHERBOURG
EC. THE WINDMILLS OF YOUR MIND

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