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LISA FISCHER

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原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


アメリカーナの奥深さを伝えたリアノン・ギデンズ、ジャジーな味付けでスタイリッシュに迫ったブレナ・ウィテカーと、女性シンガーによるフレッシュなプログラムが続く「ブルーノート東京」。昨日からはカリスマ的支持を誇るベテラン・シンガー、リサ・フィッシャーの初登場公演が行なわれています。

ニューヨーク生まれの彼女は、あのルーサー・ヴァンドロス(一度も来日せずに亡くなってしまいました)のバックグラウンド・シンガーとして本格的な活動を開始し、1989年からはローリング・ストーンズとも行動を共にしています。映画「バックコーラスの歌姫たち」で大きくフィーチャーされていたのも記憶に新しいところです。ぼくはストーンズの来日公演で彼女を見たことがありますが、今回は超至近距離で、あの聖なる(といっても過言ではありません)歌声が楽しめるとあって、とにかく開演前からわくわくしていました。場内はいうまでもなく超満員。抱えきれないほどの花束をプレゼントされたリサは、本当に嬉しそうでした。

先日「ブルーノート東京」に登場したR&B〜ゴスペル・シンガー、レジーナ・ベルとも大の仲良しのリサ。しかしその音楽性は、カテゴリー分けするにはあまりにも多彩です。オープニングの「Breath of Heaven」はルバートといえばいいのでしょうか、8ビートなのか16ビートなのか何ビートなのかもわからないパフォーマンスです。楽器をプレイするというよりも、「音を空間に漂わせてゆく」といった感じのギター、ベース、ドラムスを従えて、リサは精霊と会話するかのように声を出していくのです。2本のマイク(1本にはエフェクトがかけられています)を自由自在に操り、ときにマイクを離れて生の声でシャウトします。体の動きは実にしなやかで、両腕を動かしながら歌唱するアクションは、まるで大きな鳥が羽ばたいているかのようです。「Bird in a House」の中にはfreedomという歌詞が出てくるのですが、最前列のファンに"freedomは日本語で何ていうの?"と問いかけて、"自由"という答えを得るや否や、即興で"ジユウ"という言葉の響きを盛り込んだロング・スキャットを披露。個人的にはこの場面もクライマックスのひとつでした。

音楽監督のジャン・クリストフ・マイヨール(2011年にリチャード・ボナのバンドで「ブルーノート東京」出演)はギター、フェンダー・ローズのほか、フランス人技術者と共同開発したというサズ・ベースも弾きます。これはトルコ等で使われるサズ、そして中東で使われるブズーキを独自に改良したものであるそうです。個人的には「三味線とマンドリンを混ぜたような音だなあ」と思ったのですが、このサウンドがまた、現在のリサのジャンル分類不能ぶりに一役買っています。ドラムスのティエリー・アルピノはただリズムを刻むだけではなく、マレットを効果的に使ってメロディアスに歌に絡み、ジョン・パティトゥッチの教え子であるというエイダン・キャロルはアコースティックとエレクトリックの双方で重厚なプレイを聴かせてくれました。

中盤から後半にかけてはレッド・ツェッペリンの「Rock and Roll」、ローリング・ストーンズの「Jumping Jack Flash」「Gimme Shelter」等、ロックの大定番があっと驚くようなアレンジと鮮やかな歌声で蘇ります。原曲に親しんでいればいるほど、"この曲がこんなになるなんて"という驚きは倍増するに違いありません。公演は本日も行なわれます。ヴォーカル・ミュージックの真髄を、ぜひお楽しみください!
(原田 2016 3.22)

Photo by Yuka Yamaji

SET LIST

2016 3.21 MON.
1st
1. BREATH OF HEAVEN
2. DON'T EVER LET NOBODY DRAG YOUR SPIRIT DOWN
3. BIRD IN A HOUSE
4. ROCK 'N ROLL
5. HOW CAN I EASE THE PAIN
6. JJF
7. GIMME SHELTER
 
2nd
1. BREATH OF HEAVEN
2. DON'T EVER LET NOBODY DRAG YOUR SPIRIT DOWN
3. ROCK 'N ROLL
4. HOW CAN I EASE THE PAIN
5. FEVER
6. MISS YOU
7. WILD HORSES

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