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FABRIZIO BOSSO "Spiritual Trio"

artist FABRIZIO BOSSO

REPORT

原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO


もう"イタリアを代表する"とか、"ヨーロッパ屈指の"という説明はいらないかもしれません。毎年のように来日し、さまざまなプロジェクトで楽しませてくれるファブリッツィオ・ボッソは、いまや日本で最も親しまれているジャズ・トランペッターのひとりではないでしょうか。そして彼も、日本のファンを心から愛しています。今回は新プロジェクト"スピリチュアル・トリオ"を率いての、先週5月7日に国内発売された最新作『パープル』収録曲を中心とするステージ。CDをすでに聴いたリスナーも、これから聴いてみようというリスナーも、喜ぶこと間違いなしの熱い内容です。

メンバーはボッソのトランペットのほかに、アルベルト・マルシコのオルガン、アレッサンドロ・ミネットのドラムス。ギターもサックスもベースもありません。スウェーデンのバンド"トリニティ"も同じ楽器編成ですが、世界的にもまだまだ珍しい組み合わせといっていいでしょう。ボッソの吹奏パートが終わると、必然的に演奏はオルガンとドラムスのデュオになります。一歩間違えばスカスカな音になっても不思議ではないのですが、マルシコのプレイは「いったい、何本の指があるんだろう」と不思議になってしまうほど多彩で華麗です。左手のベース・ラインの美しさ、フット・ペダルを効果的に使用した音量のコントロール、いずれも見事です。ミネットもバスドラを多めにふみながら(オルガン・ベースを補強しているのだと思います)、小気味よいスネアとシンバル使いでスイング感を巻き起こします。

主役のプレイは、「さらにすごくなっている」というひとことに尽きます。音域の広さ、ダイナミクスの豊かさはいうまでもなく、ここぞというところで飛び出す循環呼吸、プランジャー・ミュートを用いながらのグロウル・トーン、ディレイやワウ効果を生かしたエフェクターの使用等、本当にあざやかです。しかも今回は曲目が、R&B~ゴスペル系(讃美歌、霊歌を含む)なのですから、「ボッソが持っている歌心と乗りのよさがいつも以上に全開されている」という印象を受けました。サム・クックの「A Change Is Gonna Come」(ジャズ・トランペッターではハンニバル・マーヴィン・ピーターソンも吹き込んでいました)における訴えかけるようなプレイ、1901年に出版された霊歌「Wade In The Water」にウェス・モンゴメリー「Road Song」のコード進行を当てはめるアイデアにも驚かされました。曲の間にMCがなく、すべての曲がほぼ連続して演奏されたのも、パフォーマンスのテンションを保つのに効果的だったようです。

旬の男、ボッソのスピリチュアル・ライヴをぜひご覧ください!
(原田 2014 5.14)

SET LIST

2014 5.14 WED.
1st & 2nd
1. THIS LITTLE LIGHT OF MINE
2. A CHANGE IS GONNA COME
3. A LITTLE 3/4 FOR GO AND CO.
4. LOU
5. WADE IN THE WATER
6. SOMETIMES I FEEL LIKE A MOTHERLESS CHILD / GO DOWN MOSES
EC. WISHY WASHY

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