来日公演を目前に控えたロベルト・フォンセカ ハバナで行われた最新ライヴレポートが到着! | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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来日公演を目前に控えたロベルト・フォンセカ ハバナで行われた最新ライヴレポートが到着!

来日公演を目前に控えたロベルト・フォンセカ ハバナで行われた最新ライヴレポートが到着!

ワールドワイドな活躍と並行し、
自らのルーツであるキューバでも、
精鋭ミュージシャンたちとのライヴを重ねる、
天才ピアニストの魅力

 名門インパルス・レーベルからリリースされた、4年ぶりのリーダー・アルバム『ABUC』も話題となり、最先端のジャズからアフリカン・ルーツ・ミュージックまで縦横無尽にシーンを駆けめぐる人気ピアニスト、ロベルト・フォンセカ。待望の来日公演を目前に控えた彼の魅力を、キューバ在住の写真家/文筆家、板垣真理子が、現地最新ライヴレポートと共にお届けする。

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text & photography = Mariko Itagaki

 ロベルト・フォンセカは、今のキューバ、そして世界でももっともホットなピアニストの一人である。生まれた時から豊かな音楽環境に恵まれており、父親=同名がドラマーだったこともあるためか、幼少時からドラムへの興味を示すが8歳でピアノに転向。キューバン・ピアノの巨人、チューチョ・バルデスに師事する。実はチューチョはロベルトの母親で歌い手のメルセデス・アルファ―ロの前夫にあたる。つまりドラマー、エミリオとピアニスト、ヘスース・バルデスは異父兄姉にあたる、という音楽一家。ロベルトは15歳で早くもハバナのピアノ・フェスに登場して頭角をあらわした。

 ファミリー内の豊かな音楽性だけではなく、彼はキューバにある多様で複雑な音楽性をより多く吸収し自らの内部で発展させていることでも特筆に値する。2016年のAfro Mamboのビデオ・クリップに登場する異様な風体のグループは、アフリカはナイジェリア東部のイボの人たちの秘密結社「アバクア」である。キューバに渡って根付いている点では、ナイジェリア西部ヨルバの宗教で、同様に海を渡った「サンテリーア」と同じである。そして、そのタイトルは、「マンボ」つまりカリブ、キューバ以外の何物でもない。これは、ほんの一例でしかなく、数多くのキューバのリズムを聴かせ、特にピアノでモントーノを叩きだすときのノリは極め付け。

 同時に、メロディの美しさとリリシズムは彼の特徴のひとつともなっている。隣国の曲「ベサメ・ムーチョ」(最新アルバムABUCにも収録)をあれほど美しく聴かせてくれたのはキューバ広しと言えど私には初のことだった。この曲を聴く感動さえ知らされた。そしてキューバの音楽教育の基礎(彼はハバナのアーティスト大学ISAを卒業)であるクラシック的要素も見え隠れする。時にはバッハを思わせるメロディがアフロのリズムの合間に聴けるときには、その多様さの陶酔を覚えることになる。

 彼の音楽の多様さを育んでいるのは共演者たちでもある。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブで、ピアノのルベーン・ゴンザレスの跡を継ぎ、またオマーラ・ポルトゥウンドとの共演などでもすでに来日している。海外では特に、アフリカ、ブラジルの音楽家との共演。アフリカの歌い手ファトゥマタ・ジャワラや、アフリカン・ハープ、コラ奏者との共演。オマーラと共演したブラジルの歌い手マリア・ベターニア。さらにはチンバラーダのカルリ―ニョス・ブラウンなど、名前を聞くだけで浮き浮きしてくるようなメンバーと組んでいる。

 彼は早くからの海外体験もあり、多くの海外ツアーも重ねているが、本拠地をキューバのハバナに持っている。演奏の場の中心はハバナのベダード地区のメイン・ストリート、Ave23 にある「La Zorra y El Cuervo=狐と烏」と、オテル・メリア・コイ―バの前の建物にある「JAZZ CAFÉ」。それぞれ週一のスケジュールで飛び切りの演奏が聴けるのは嬉しい。「La Zorra y El Cuervo」は11時のオープンだが、10時くらいから並ばなければ入れないほどの盛況ぶり。

 キューバの共演者(来日メンバーと重なる)も映え抜きである。ドラムのラムセス・ロドリゲスのリズムは聞きに来た人のほとんどが顎を落とす。このリズムに感動しない人はいないだろう。以前は、一種のリズム楽器でもあるピアノのロベルトとラムセスの二人のやり取りのダイナミズムが聴きどころのひとつだったが、最近はそれが変化してきた。その分、それぞれのソロの聴きごたえが増している。同じ曲でも、ライブの度に編曲の変化が見られ、何度聴きに行っても飽きない。ハバナに2年半住んでいる私がもっとも数多く聴きに行ったライブである。ベースのジャンディ・マルティネス。そして ! 名だたるパーカッショニスト、アデル・ゴンサレスへの期待は嫌でも高まる。まさに、強力なリズム隊を率いての来日だ。そして、ロベルト独特のメロディの美を聴かせてくれることも間違いない。私事になるが、彼らの来日に一時帰国を合わせてしまったほど。今年後半の本当に楽しみなライブの一つである。

La Zorra y El Cuervoにて撮影

 さらに先日9月1日はPabellón Cuba、9月2日は Fabrica de Arte Cubanoでもライブが行われたばかりで、2日間ともに熱いステージだった。特に2日は、改装されたFabrica de Arteで雰囲気もあるし、しかも深夜のライブでキューバらしい雰囲気がいっぱい。2日間ともパーカッションのアデム・ゴンサレスが入り、もともとドラムスのラムセス・ロドリゲスがすごいのに、いよいよリズム隊が充実し、これからの日本でのライブを予感させるものだった。

2017年9月2日 Fabrica de Arte Cubanoにて撮影
板垣 真理子(いたがき・まりこ)
1982年ジャズメンを撮ることで仕事を始める。音楽に魅せられアフリカ通い、さらに神々の渡った先ブラジル、カリブにも通う。著書写真集、写真展多数。現在キューバ在住。写真と文を日本に送る傍ら歌手として歌っている。世界の「壁」に写真を飾るプロジェクトも進行中。
http://orange.zero.jp/afrimari/

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