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[インタビュー|OFFSTAGE]ヴァレリー・シンプソン

[インタビュー|OFFSTAGE]ヴァレリー・シンプソン

モータウンは私にとって、音楽の学校でした。

 レイ・チャールズ、マーヴィン・ゲイ、ダイアナ・ロス......。モータウンのビッグネームたちに名曲を提供してきたレジェンド、ヴァレリー・シンプソンが音楽にこめる思いとは。

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 「絶対に一緒に日本に行きたい! 行こう!」

 ニューヨークのパーティーで出会ったサックスのデイヴ・コーズの猛烈なアプローチで、5月に4日間8公演実現したデイヴ・コーズ featuring ヴァレ リー・シンプソン。連日会場は満席で盛り上がった。

「日本は9年ぶりです。前回は亡くなった夫とのデュオ、アシュフォード&シンプソンでした。そのときに親しくなった人たちも来てくれて嬉しかった」

 アシュフォード&シンプソンはモータウンを代表するソングライターチーム。レイ・チャールズの「レッツ・ゴー・ゲット・ストーンド」、マーヴィン&タミーやダイアナ・ロスが歌った「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」、やはりダイアナの「リーチ・アウト・アンド・タッチ」、チャカ・カーンの「アイム・エヴリ・ウーマン」を大ヒットさせた。

「1960年代は"モータウン"という学校に通っている気持ちでした。ニック(夫のニック・アシュフォード)はデトロイト出身で、ニューヨークの教会で私と出会い、ソングライターとして成功した。そして2人でデトロイトへ行き、モータウンと契約をしました。ソングライティングはまず私がピアノでメロディをつくり、ニックが歌い始める。メロディを聴くと自然に言葉が生まれてくると言っていたわ」

 シンガーとは直接会わないことも多かった。「レイと会ったのは曲を提供して30年後のパーティー会場でした。ずいぶん長くかかったね!と喜び合って、私のピアノ演奏でレイが歌ってくれました」

 今回の公演で、ヴァレリーは自身が書いた名曲の数々をすさまじい歌唱で披露。客席を熱狂させた。なぜモータウン時代は自分で歌わなかったのだろう。

「自分で歌おうなんて、あのころはまったく思いませんでした。曲は私にとって子どもたち。だからこそ"親"として、いい人生を送ってほしい。できるだけたくさんの人に聴いてもらいたい。私よりもいい声を持つ有名なシンガーたちに歌ってほしいのは親心です。マーヴィン・ゲイはね、私たちがつくったホールケーキのスポンジに美しいデコレーションをしてくれるような歌でした。ダイアナ・ロスも、私たちの期待に応えようとしていることがはっきりと伝わってきました。みんな、いつも、私たちが期待していたよりもはるかにいい作品にしてくれた」

 作曲ではシンプルなメロディを心がけたという。

「わかりやすくて、みんなの記憶に残るメロディをいつもつくろうとしました。「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」も「リーチ・アウト・アンド・タッチ」も、ラヴソングでありながら、諦めない心や何かを乗り越えようとする意志、そして誰かに手を差し伸べる優しさも意識しています。リスナーは、何度も聴くうちにそれを察してくれました」

 自作が50年以上愛されるとは想像もしなかった。

「2、3か月で聴かれなくなると思っていました。まさか時代や世代を超えて聴いてもらえるなんて。もし50年前にわかっていたら、曲を作ったときの気持ちや背景を書き綴って残していたでしょうね」

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Photo by Yuka Yamaji

DAVE KOZ featuring VALERIE SIMPSON
2019 5.3 - 5.6
VALERIE SIMPSON
(ヴァレリー・シンプソン)
1946年、ニューヨーク生まれ。ソウル界に輝くデュオ、"アシュフォード&シンプソン"で一世を風靡。夫ニコラス亡き後も40年ぶりのソロ新作『Dinosaurs Are Coming Back Again』(2012)を発表、コリーヌ・ベイリー・レイとの共作も。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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