サンボーン"クインテット・プロジェクト"をメンバーのベンが語る! | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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サンボーン"クインテット・プロジェクト"をメンバーのベンが語る!

サンボーン"クインテット・プロジェクト"をメンバーのベンが語る!

公演直前インタビュー!
メンバーのベーシスト、ベン・ウィリアムスが語る
サンボーンの"クインテット・プロジェクト"

 スペシャルな奏者を擁し、"私が考えるモダン・ジャズ"に臨む! それが、サンボーンが鋭意組み、矜持と創造性を鮮やかに解き放たんとしているクインテットの本意だ。同バンドの要となるベン・ウィリアムスがそのクインテット、そして彼のブロウの魅力を語る!

interview & text = Eisuke Sato interpretation = Kazumi Someya

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 昨年の12月に日本でもお披露目されたデイヴィッド・サンボーンの新クインテットはまこと新鮮だった。サンボーンのアルト・サックスとトロンボーンの2管がフロントに立つ、アコースティックなジャズ傾向にあるそのクインテット表現はずばり、<デイヴィッド・サンボーンが考える、モダン・ジャズ>と言いたくなるもの。彼は繊細にして雄々しくもある2管の絡みのもと、雄弁なソロを披露。その様に触れて、今までソウルやブルースに根ざしていることを誇示/謳歌していた彼が70歳を回って、ジャズという器と改めて対峙しようとしていると感じた聞き手も少なくなかったに違いない。

 その後もギグを重ねてきた同クインテットだが、11月26日から持たれる2度目のブルーノート東京公演の着目点はリズム・セクションは留任させつつ、トロンボーン奏者とピアノ/キーボード奏者が変わったこと。新しいトロンボーン奏者のマイケル・ディーズはジュリアード音楽院できっちり学んだ技巧派で、これまで10枚ほどリーダー作を出している人物。そして、新任ピアノ/キーボード奏者であるジェフリー・キーザーはブルーノートやソニー他から10枚強のアルバムを出している俊英で、2005年には故ジム・ホール(ギター)とデュオ公演をブルーノート東京で持ったこともあった。

 一方、この10月下旬にもボブ・ジェームス・トリオの一員としてブルーノート東京に出演したビリー・キルソン(ドラム)とすでに今年はホセ・ジェイムズや渡辺貞夫のサポートで来日し、コンコードから2枚のリーダー作も持つベン・ウィリアムス(べース/彼はパット・メセニー・ユニティ・バンドの一員でもあった)の留任はおおいに納得できるところだ。そのリズム・セクション音はアコースティックながら、同時代のヴァイブを宿しまくるものであるから。

 現在、歌もの中心のソロ3作目『I Am a Man』を制作中であるというベン・ウィリアムスは、サンボーンの新クインテットの現況についてこう語る。

「昨年のブルーノート東京公演をおおいに楽しんだ後、ブルーノート・クルーズ、(サンボーンの地元である)セントルイス、そしてヨーロッパでの公演を経て、バンドはその都度ごとに腕を上げていきました。このバンドがユニークなのは、レパートリーを最新のものに限定せず、むしろデイヴ(デヴィッド・サンボーン)が長年の間に様々なバンドで演奏してきた曲を取り上げ、そこに新たな息吹を注ぎ込んでいること。デイヴは我々に大いなる探訪の自由を与えてくれています」

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2017 12.6 - 12.9 @BLUE NOTE TOKYO
DAVID SANBORN NEW QUINTET featuring WYCLIFFE GORDON, BEN WILLIAMS, ANDY EZRIN & BILLY KILSON
Photo by Yuka Yamaji

 そもそも、売れっ子のウィリアムズはどういう経緯で、サンボーンに誘われたのだろう。

「デイヴとは、彼のドラマーであるビリー・キルソンを通じて繋がりました。彼とは以前から一緒に仕事をしていたんです。あまり知られていないかもしれませんが、デイヴは様々な音楽シーンの、特に若い世代の動向に非常に明るい。話をして分かったのは、パット・メセニー他のサイド・マンとしての僕の仕事やリーダー作についても、彼が認知していたこと。デイヴの家で新しいバンドで何度か軽くセッションしてみたところ、音楽的にも人柄の面でもすぐに彼とは意気投合しました。ステージ上でも下でも、このクインテットは実に楽しいバンドです」

 以降ずっとサンボーンを横で見てきているウィリアムズは、現在のサンボーンの演奏の真価を次のように語る。

「デイヴのサックスの音色は特徴的です。アルト・サックスという楽器の歴史を辿れば、もちろん多くの優れた奏者がいるわけですが、なかでもデイヴは"聞いてすぐ彼だと分かる"稀有なものですよね。それはサックス奏者の一世代が丸ごと、その影響下にあるほどのものです。僕もいろいろな音楽を聴いて育ちましたが、デイヴの音はジャズ、ロック、R&B /ソウル、フュージョンの世界にまたがってきました。音楽ファンであれば、気づかずともあの伝説のサウンドと出会うことになるのです。それほどの影響力を持つ人物、僕自身が長年のファンであった人物と、同じバンドでの活動を共有できるのは光栄なことです」

 そして、彼は日本の聴き手に向けて、以下のメッセージを送ってくれた。

「現状、バンドはタイトにまとまっていて、万全。僕の役割は端的に、ベースを弾いて楽しむ、それだけです! ファンの皆さんは最高のショウを期待してください。正にオールスター・バンドであり、デイヴはその偉大なるリーダーなんです。デイヴのオリジナル曲 、マイケル・ブレッカーの曲、そしてデイヴが好きで演奏しているカヴァー曲(前公演では、ディアンジェロやマーカス・ミラー曲も披露した)もいくつか盛り込んだ、興味深いセット・リストを組んでいます。ファンの皆さんにはお馴染みかもしれない素材の多くを我々の想像力で解釈し直すことをデイヴが許してくれているので、新鮮なサウンド、新鮮なアプローチで曲を楽しんでいただけるでしょう」

interview & text = Eisuke Sato interpretation = Kazumi Someya


佐藤英輔 (さとうえいすけ)
音楽評論家。先日シャイ・マエストロに取材し、その真心にほだされる。ロックやファンク、そしてワールドやジャズを専門領域とし、日が暮れたら机に向かわないがモットー。ゆえにライヴは良く行き、それに触れたブログは、https://43142.diarynote.jp

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