[インタビュー|OFFSTAGE]ジョエル・ロス | News & Features | BLUE NOTE TOKYO

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[インタビュー|OFFSTAGE]ジョエル・ロス

[インタビュー|OFFSTAGE]ジョエル・ロス

ニューヨークに拠点を移し音楽が磨かれている。

 ブルーノート・レコード所属の期待の若手ヴィブラフォン奏者、ジョエル・ロスには打楽器の力強さとピアノの美しさがある。そのサウンドのルーツにはドラマー体験があった。

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 名門レーベル、ブルーノート・レコードから『キングメーカー』でデビューしたヴィブラフォン奏者、ジョエル・ロスが2019年11月に初来日。ブルーノート東京で2日間4公演を行い、透き通るような音色を聴かせた。

「ブルーノート・レコードの社長、ドン・ウォズの息子が僕の音楽を聴いて、父親に推薦したらしい。ドンから連絡をもらった2016年には、すでに『キングメーカー』をレコーディングしていて、さっそく聴いてもらったんだ。ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターが若かったころのブルーノートの空気をよみがえらせたい、とドンは話していたよ」

 ジョエルがリリースした『キングメーカー』は、母親と2人の息子の写真がジャケットになっている。

「僕の母と、子どものころの僕と、双子の兄だよ。"キングメーカー"は、兄と僕を生んだ母のこと。母に捧げた曲で、母に捧げたアルバムなんだ。つくり手の僕の頭の中には、この曲にこめた物語がある。だけど、ショウのMCでも、こういうインタビューでも、詳細は語ったことはない。音楽は、発表した時点でつくり手ではなく、リスナーのものになる。感じるままの演奏を楽しんでほしい」

 ジョエルは、もともとはドラムを叩いていた。

「ずっとドラマーになりたかったんだけれど、兄のほうがうまかった。小学生のとき、僕が暮らしていたシカゴでジャズバンドのオーディションが開かれて、兄弟で参加した。そのときにヴィブラフォンを選んだ。ドラムは、兄にかなわないからね。父親とインストラクターに、ヴィブラフォンにしろ、と言われて、いやいや転向したのさ。今もまだドラムに未練はあるよ。でも、ヴィブラフォンをやってみると、打楽器の要素が強いことがわかった。ピアノとドラムを合わせたような楽器だ。音階はあるけれど、リズムも刻む。それで、どんどん楽しくなっていった。

今では自分の気持ちをもっともよく伝えられる楽器はヴィブラフォンだと思っているよ」

 ブルーノート東京では『キングメーカー』からの曲を2曲。ほかは新曲でセットリストを構成した。

「この4年でつくった曲も聴いてもらいたかったからね。『キングメーカー』を録音した後、僕の音楽性が大きく変わったことを感じているんだ。そのもっとも大きな理由は、シカゴからニューヨークへ活動の拠点を移したことだと思う」

 ニューヨークへ引っ越してから、ジョエルのパフォーマンスの機会は格段に増えた。

「ニューヨークにはたくさんのジャズクラブがあって、たくさんのミュージシャンが暮らしている。だから、自分のリーダーバンドに限らず、ありとあらゆるセッションに参加している。27丁目のジャズギャラリー、59丁目のリンカーン・センターにあるディジー・クラブでよく演奏しているよ。ニューヨークにいると、さまざまなミュージシャンから連絡がある。さまざまな音楽を演奏できなくてはいけない。ものすごく鍛えられているよ」

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Photo by Tsuneo Koga

JOEL ROSS "Good Vibes"
2019 11.12 - 11.13
JOEL ROSS
(ジョエル・ロス)
1995年、シカゴ生まれ。3歳でドラムを始め、14歳からヴィブラフォンを演奏。名門ブルーノート・レコードからデビューし世界的な注目を集める。マカヤ・マクレイヴン、マーキス・ヒルなど数々の話題作に参加。

photography = Hiroyuki Matsukage
interview & text = Kazunori Kodate
interpretation = Kazumi Someya

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