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[インタビュー|MY INSTRUMENT]ネルソン・ゴンサレス

[インタビュー|MY INSTRUMENT]ネルソン・ゴンサレス

ネルソン・ゴンサレスのトレス

「アフロ・キューバンを受け継ぐサルサには、トレスがよく合っている。エディと僕は互いに補い合っているんだ。一緒に演奏していてこれほど満たされるピアニストは他にはいない」

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 ニューヨーク・ラテンのマエストロ、エディ・パルミエリ楽団の一員として来日したネルソン・ゴンサレス。彼が弾く"トレス"は、キューバ生まれ、復弦3コース(トレスはスペイン語で「3」の意)の弦楽器だ。アフロ・キューバンで特徴的なワヘオ(繰り返しのリズム・パターン)を奏でるのに適し、ピアノより前から使われていた重要な楽器である。

 ネルソンはプエルトリコ生まれでニューヨーク育ち。幼いころからキューバ音楽に親しんでいたが、初めてトレスを手にした1960年代末ごろは、教則本もなく、まわりで弾いている人もいなかったという。

「当時あまり知られていなかったこの楽器を、広く知らしめる必要性を感じた。そうしたらある人に、『トレスを弾きたいなら、(キューバ人で第一人者の)アルセニオ・ロドリゲスを聞け』といわれ、彼の曲が入った90分のカセットを渡された。3か月間必死に練習して、それを独学で全部マスターしたよ。あとから知ったんだけど、僕には絶対音感があるみたいなんだ」

 それ以来ニューヨーク・ラテンのさまざまな名門楽団でプレイしてきた彼は、ファニア・オール・スターズのメンバーとして79年にキューバへ渡り、そのとき、名手ニニョ・リベラから、30年代に作られたトレスを譲り受けたという。現在使っているトレスは、職人に頼んでその楽器と同じように作ってもらったものである。ちなみに、彼のトレスに書かれているのは、こちらもキューバ生まれの偉大なベース奏者カチャオのサイン。「君の兄弟カチャオよりネルソンへ」とあり、90年代初頭にハリウッド・ボウルで共演したときにもらったのだそうだ。

「ジャズもよく聞いたし、実はジミ・ヘンドリックスの熱狂的なファンなんだ」

 と語る彼のアグレッシヴなプレイは、まさにニューヨーク・ラテンの神髄というべきだろう。

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トレスは復弦3コース。基本のチューニングは低音からG(オクターブ)・C(ユニゾン)・E(ユニゾン)となっている。
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エレアコ仕様にもなっているトレスは、エフェクターを挟まずにアンプのローランドJC-120に直結させている。

photography = Takashi Yashima
interview & text = Ikuo Okamoto
interpretation = Aki Ota
cooperation = RIttor Music

NELSON GONZALEZ(ネルソン・ゴンサレス)
1945年プエルトリコ生まれ。11歳のときからニューヨークで育つ。70年ごろにトレスを始め、以来、ラリー・ハーロウ、イスマエル・ミランダ、ティピカ73など数々の名門ラテン楽団のほか、ポップス界でも活躍している。
岡本郁生 (おかもと・いくお)
トロピカル音楽からポップ/ジャズ/ロックまでラテン文化全般をカバー。音楽番組制作、雑誌連載、イベントなど幅広く活動中。ラテン音楽Webマガジン「eLPop」メンバー。

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