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[インタビュー|MY INSTRUMENT]ダニー・マッキャスリン

[インタビュー|MY INSTRUMENT]ダニー・マッキャスリン

ダニー・マッキャスリン、
唯一無二の愛器

ボウイの遺作『★』で一躍脚光浴びた サックス奏者、ダニー・マッキャスリン愛用の テナーサックス。バークリーで彼と同窓だった 三木俊雄がその愛器について聞く!

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 80年代後半のバークリー音大には、マーク・ターナー、ジョシュア・レッドマン、シェーマス・ブレイクなど今のジャズシーンのトップを形成するテナー・プレーヤーがたくさんいた。しかし何と言ってもその頂点はダニー・マッキャスリン。彼は学内でまさに神にも等しい存在だった。初めて彼の演奏を観た時の衝撃は今でも忘れられない。目の前で何が起こっているのかわからなかった。僕が夢を見ているか、もしくは彼が手品をやっているとしか思えなかった。マイケル・ブレッカーもクリニックに来た時、真っ先に「ダニー、楽器は持って来たかい?」と気にかけるほど。しかし話をしても、まるで尖ったところのないメローでスローなカリフォルニアン。

 その彼が学生の時からずっと使い続けている愛器が「セルマー・スーパー・バランスド・アクション」。シリアル・ナンバーは37000番台というから約70年前に作られた、いわゆる"ヴィンテージ・モデル"。

「これは16歳のときに新聞の「売ります買います」欄で偶然見つけたものだよ。母親にお願いして、銀行でローンを組んでもらって手に入れたんだ。」

 マウスピースはソニー・ロリンズやウィルトン・フェルダーが使っているモデルとして有名なベルグ・ラーセンのメタル。

 しかし何と言っても驚くべきは、彼は16歳の時から一度も楽器を変えていない、ということ。サックスプレイヤーはいわゆる「楽器オタク」が多く、特にマウスピースは何十本も持っているという人を何人も知っているが、40年近く一つのものを吹き続けているのは彼以外に知らない。

「楽器やマウスピースを探すより、音楽と練習に集中したかっただけだよ。」

 とダニーは語るが、普通はありえない。この楽器は彼の身体の一部としか思えない音色を放っている。

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セルマー・スーパー・バランスド・アクション。特に初期のモデルはベルのキーガードが2つに分かれている。
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ベルグ・ラーセンのメタル。「そろそろ新しいのを探そうと思っているんだ」と10年前から言ってる(笑)

photography = Takashi Yashima
interview & text = Toshio Miki
cooperation = RIttor Music

DONNY McCASLIN(ダニー・マッキャスリン)
1966年アメリカ生まれのテナー・サックス奏者。バークリーで学び90年代から様々なアーティストのサイドマンとして活躍。マリア・シュナイダー・オーケストラとその人脈で知り合ったデヴィッド・ボウイと『★』で共演。
三木俊雄(みき・としお)
1963年生まれ。テナー・サックス奏者、作編曲家。バークリー音大を卒業後、96年から10ピースバンド「フロントページ・オーケストラ」を率いると共に、小曽根真率いるNO NAMEHORSESのメンバーとしても活躍中。

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