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[インタビュー|MY INSTRUMENT]ケニー・ギャレット

[インタビュー|MY INSTRUMENT]ケニー・ギャレット

ケニーが40年近く 愛用するマークVI

セルマーマークVIの愛用者として知られている凄腕アルトサックス奏者、ケニー・ギャレット。その特徴と、40年もの付き合いとなる愛器との出会いについて探ってみた。

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 一本一本特徴が微妙に違うセルマーのマークⅥだからこそ、時間をかけ数本を試奏してから購入するのが今どきの買い方。マークⅥは高価格で非常に人気があるため、なかなか手に入らず、購入する機会に恵まれると慎重に選ぶサックス・プレイヤーが多いものだ。ケニーもきっと同じように楽器を選んだのではと思いがちだが、実はまったく違う。18歳のケニーはデューク・エリントン・オーケストラの一員で、マークⅦを使用していた。

「当時のリードアルト奏者だったハロルド・ミネルヴァがマークⅥを使っていた。けれども、なぜか僕が使っていたマークⅦを気に入って、マウスピースを含めて、まるごと物々交換したんだ」

 今日のマークⅥの高い人気を思うと考えられない話だ。それからケニーは40年近くそのマークⅥとマウスピースを愛用し続けてきた。

 近くで見ると二つの特徴がわかる。一つはサイドFキー、及びローB、ローBb、パームFキーがライザップされて、手に合った高さまでエポキシ樹脂と思われる素材でカスタム化されている。プロのプレイヤーがよく行うことで、特にマークⅥによくみかける工夫だ。そして、もう一つの特徴はユニークだ。楽器全体のあちこちに宝石が付いている。「本物のダイヤだといいんだけど」と、ケニーは笑顔で理由を教えてくれた。

「世界的に有名なボストンのリペア職人、エミリオ・ライオンズに勧められたんだ。彼に"あなたのサックスは光るものが必要だ"と言われ、勝手に埋め込まれていたよ。」

 ケニーが使っているマークⅥは人生で3本目に手に入れたアルトだ。2本目はビンテージのCONNだった。そして趣味でサックスを吹いた父からもらった最初のアルトには、なんとベルに弾痕があった。笑いながらケニーは言う。

「父がどこで手に入れたか、知りたくないけどね」

instrument
エミリオ・ライオンズに勝手に付けられたCZダイヤ。楽器の修理・調整は完全に彼に任せているそうだ。
instrument
丁寧にライザップされたローBbとパームFキー。素材の色がビンテージ楽器に相性がよく、違和感はない。

photography = Takashi Yashima
interview & text = Jason Andres

Kenny Garrett(ケニー・ギャレット)
1960年生まれ。デューク・エリントン・オーケストラとマイルズ・デイヴィスとの活躍で脚光を浴び、84年のデビュー作「Introducing Kenny Garrett」でソロ活動をスタート。アート・ブレーキ―、マッコイ・タイナーなど様々なレジェンドと共演。

Jason Andres(ジェーソン・アンドレス)
通訳修士号をもつ日本在住23年のサックス奏者。ボブ・ミンツァー、デビッド・サンボーンらの通訳も務める。去年にデビューアルバム「The Jason Andres Quartet -Under Your Feet-」をリリース。

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